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出版界におけるアナログとデジタルの架け橋に?
iPhoneと紙で楽しむ絵本「PhoneBook」の新しさ

中島 駆 [フリーライター]
【第92回】 2010年6月15日
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iPhoneと紙で楽しむ絵本「PhoneBook」の価格は2980円(税込み)。専用アプリは無料でApple Storeからダウンロードできる。

 iPadの上陸と共に、電子書籍市場がにわかに活気づいてきた。

 たとえば、講談社が人気ミステリー作家・京極夏彦氏の新作をいち早くiPad向けに販売したのは記憶に新しいところである。また、日本電子書籍出版社協会が運営するネット書店「電子文庫パブリ」では、今秋をメドにiPad向け専用アプリの提供を予定している。

 あるいは先頃、KDDI、朝日新聞社、ソニー、凸版印刷の4社が共同で電子書籍配信事業を行なうことを発表した。ソニーの電子書籍端末「Sony Reader」は、アマゾンのキンドルには及ばずとも、米国市場において堅調にシェアを獲得している。こちらも年内の発売を予定しており、今年後半にかけて電子書籍の話題が一層熱を帯びることは間違いない。

 しかし、今のところは出版業界をはじめ、「まだまだ様子見」といった感が強いのも事実だ。

 そんななかで、紙の絵本とデジタル端末とを融合させた絵本『PhoneBook』が登場した。こちらは、電通と株式会社ロボットのコラボにより誕生したもの。専用アプリをインストールしたiPhone(あるいはiPod touch)を絵本にセットすることで、よりインタラクティブな読書体験を可能にする。電子書籍が注目されるなか、あえて「アナログとデジタルとを融合させる」という試みがユニークだ。

 実際にiPhoneをセットしてみると、絵本の真ん中にモニターが来るようになっている。「Ride! Ride!」というタイトルの通り、絵本のテーマは乗り物だ。iPhoneのモニターを、電車や飛行機、潜水艦、宇宙船などの「窓」に見立て、そこで繰り広げられる様々な景色を、主人公であるポポやモモと一緒になって楽しむという趣向である。

 もちろん、流れる景色を楽しむだけではなく、そこには様々な仕掛けが施してある。

 まずは音声。軽快な英語のテーマソングに合わせて登場する汽車、飛行機、小鳥のさえずり、海のさざ波など、場面ごとに流れる効果音は、聞いているだけで心地いい。子供はとりわけ「音」に敏感なので、これだけでも今までにない新しい絵本の感覚を味わえる。

 しかし何より、タッチパネルを活かした工夫の数々が面白い。電車を触ると汽笛を鳴らして飛び上がり、森をつつくと中から鳥たちが飛び立っていく。空の上では雲を自由自在に操ることができるし、海の底では魚たちを相手にダンスの指揮を執ることもできる。宇宙では、絵本を左右に傾けながら飛んでくる星々の間を縫って飛ぶ。

 「音」「動き」「ゲーム性」のいずれをとっても、子供たちの興味を引くためには、どのようなギミックが効果的であるかがよく考え抜かれている。飛び出す絵本などは、大人のファンも多い。ゆくゆくは大人向けの絵本などもリリースされてよいかもしれない。

 電子書籍の登場は、必ずしも紙の本の駆逐を意味するのではない。デジタルと紙のよさをうまく引き出せば、まだまだ新しい読書体験を生み出すことは可能のようだ。

(中島 駆)


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