文化的要素の強い上野と、ショッピングの聖地の銀座を
コラボレーションさせることで生まれる付加価値

 例えば、商業施設であるショッピングセンターの中に、文化施設であるミニ博物館やミニ科学館、ミニ水族館などの要素を組み込んで融合させる。すると、ショッピングセンターが、文化に触れられる空間にもなり、買い物を楽しむだけでなく知的好奇心にも応える場所になります。

 美術館などの文化的な要素が強い上野とショッピングの聖地である銀座をコラボレーションさせたような、そんな空間です。そういう場所、ありそうであまりないですよね。付加価値によって、「長く居たい」「また来たい」と思ってもらえる空間になる。それが集客や満足度の向上につながります。

―― デザインは、課題解決のための設計図のような役割になってきているわけですね。

青田 そうですね。私たちは、単に見栄えのいいものを作るデザインのプロではなく、デザインを通じてお客さまの課題を解決するプロなのです。当社ではデザインを「顧客の意思や目的の方向に空間ユーザー、つまりそこを利用する方のこころを動かすため、ソフト資源を結集して顧客事業の成功をもたらす一連のプロセス」と位置づけ、お客さまである事業者や空間ユーザーの「こころを動かす空間づくり」に取り組んでいます。

―― 空間をデザインするとき、顧客である事業者に提供するもの(toB)と、その施設を利用するユーザーに提供するもの(toC)、2つの側面を考える必要があると思います。

青田 そうですね。まず、お客さま(toB)に対しては、「モノを多く売りたい」「自社のファンを増やしたい」「居心地のいい場所を作りたい」といった課題に対して、空間づくりを通して事業の成功をサポートすることを第一に考えます。

 そのために、私たちが最も重視しているのはお客さま以上にその企業・事業を良く理解すること。すると、企業や事業がどのような方向に向かっているかが分かり、その方向性をきちんと組み込んだプランニングやデザインをすることができます。

 例えばある新商品の商業空間を作るとき、性能や機能を伝えるだけではなく、なぜ、この会社は今この商品を発売したのか、それはどんな方向性を示しているのか、そこを理解することで最もふさわしい空間づくりをすることができるんですね。

 上辺のデザインだけでは単純な「陳列」になってしまうんです。それではダメで、お客さまの要望を形にする、意味をもった「展示」をすることが重要です。同じ見せる行為でも、陳列と展示では大違いです。