創業から現在まで増収増益を続け、日本最大級のIT企業に成長したヤフー。その収益モデルは盤石なものがある。しかし、盤石だからこそ進出できない分野もあり、それが次代の成長の足かせになる可能性もある。大企業ゆえの意思決定の遅さもささやかれるなか、同社が取ったのは自前主義との決別だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

「ツイッター機能が付いてないとケータイとは呼べない時代がくる」

 2010年5月、ソフトバンクモバイルの新商品発表会の壇上、孫正義社長は突如、ツイッター機能を全携帯電話に標準搭載することを明かした。ソフトバンクはヤフーに38.6%出資する親会社。ヤフー側にとって「寝耳に水」(川邊健太郎メディア企画部長)のことだった。

 今、インターネットではツイッターやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)といったソーシャル系サービスが流行している。個人が日記を書いたりなにかをつぶやいたりすることで、他者とつながる仕組みだ。

 海外ではツイッターやフェースブックが人気で、日本でも無料ゲームとSNSを組み合わせて提供しているミクシィ、ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーが急成長した。3社の会員数はそれぞれ、2000万人前後と多く、ツイッターの日本での月間利用者は1000万人に迫るともいわれている。

 じつは最近、ヤフー社内では30代の女性ユーザーがわずかながら減っていると大騒ぎになった。その原因について川邊部長らの見立ては、「ツイッターの普及」だった。

 30代の女性といえば、ツイッターの利用層とも重なる。ソーシャル系サービスは病みつきになる利用者も多い。サービスを提供する会社もそれを承知しているため、コミュニケーション機能に加えてニュースやその他の情報も提供している。

 そのため、これまで多くのインターネット利用者が最初に見る画面だったポータルサイトは、ソーシャル系サービスが取って代わる可能性もある。