注目のカメルーン戦は1-0で日本が勝利した。

 今大会の初戦ほど、日本のファンの心理を複雑にした試合はないだろう。直前の強化試合は4戦全敗と勝負弱さをさらけ出し、岡田監督の選手起用や戦術における迷走もひどかった。メディアがいくら「頑張れ、ニッポン!」とあおっても、大半のファンは「勝てっこない」と内心では思っていた。

 だからといって、完全に突き放したわけではない。試合が始まればテレビをつけ、「日本代表、勝ってくれ」と心のどこかで願っている。その試合がカメルーン戦だった。

 そして日本代表は、その願いに応える結果を出した。前半39分、松井大輔が右から上げたクロスを本田圭佑が巧みにトラップ。左足でゴールに蹴り込み先制点を奪った。相手DFをフェイントで交わすと同時に本田をゴール前に詰めさせる時間を作り、正確なクロスを送った松井のプレーも見事なら、それに応えた本田もさすがだった。どちらも日本を飛び出し、ヨーロッパで勝負をしている選手。そこで鍛えられた技術とメンタルによって生まれたゴールといえるだろう。

 リードしてからは防戦一方になり(とくに後半20分過ぎ)、試合前とは一転して応援し出したであろうファンはヒヤヒヤし通しだったが、なんとか守り切って勝点3を獲得した。岡田ジャパンは前評判を覆したのである。

ゴールを決める場面で
民族性が表れる

 ところで、ここでふとW杯はなぜ、これほど多くの人を熱狂させるかと考えた。

 世界のほとんどの国で行われているスポーツ、サッカーの世界一を決める大会だ。選手たちは自国民の期待という重荷を背負って全力でプレーする。その姿を見たいというのが、まずあるだろう。

 そしてもうひとついえば、民族の違いに対する興味、各国の国民性を見たいという思いだ。サッカーは手を使わず相手ゴールにより多くボールを入れた側が勝つというシンプルなスポーツ。シンプルであるが故、そのプレーには国民性が表れる。

 W杯に出てくる国はどこも、同様の最高度のレベルのプレーを見せるようになっている。ひと昔前までサッカースタイルには組織力のヨーロッパ、個人技の南米という大まかな色分けがあったが、今ではヨーロッパも南米も、そしてアフリカもアジアも、緻密な組織立った攻守を見せる。