開館に至るプロセスに
子どもたちが参画する

 今、博物館などの展示分野では、開館前から利用者となりうるユーザーを巻き込み、ワークショップなどを通じて展示のあり方を一緒に考えるというケースが増えている。ユーザーのリアルなニーズを拾い上げることが狙いであり、その1つの例に、東京・足立区の「ギャラクシティ」がある。

 足立区では、区内の子どもの生育環境における課題(家庭や地域の教育力の低下、遊びや実体験の減少)の解決を目指して、科学館の全面リニューアルを丹青社に依頼。リニューアルのテーマは「子どもがつくるギャラクシティ」で、開館に至るまでのプロセスや開館後の継続的なプログラムに、子どもたちを参画させ、子どもたちのチャレンジ精神を育み、生き生きとした施設イメージを持続させることを課題としていた。

「子どもがつくることを具現化するために、『こどもみーてぃんぐ』を設置し、企画やデザインの段階から、ユーザーとなる子どもたちに主体的に施設づくりに参加してもらう仕組みを作りました。例えば、館内の解説やサインのフォントを子どもたちにデザインしてもらいました。多少稚拙な部分があっても、“自分の施設として愛着を持ち使ってもらう”ことを第一に考えました。それがこの施設の課題を解決するためのデザインプロセスだったのです」

 施設の形態も、科学館から子どもの総合的体験施設へと変貌した。高精密なデジタルプラネタリウム、国内最大級のネット遊具、クライミングウォール、「作る」を楽しみ考える力を伸ばす体験コンテンツなど、子どもたちが参加し、学べる施設構成とした。こうしてユーザーに主体的に文化的価値へアプローチしてもらうしかけを盛りこんだ施設を具現化した結果、年間利用者が30万人から160万人に激増したという。

文化的価値をいかに分かりやすく伝えるか。<br />利用者に主体的に施設づくりへ<br />いかに参加してもらうか。<br />文化空間の新しい形を創造する「ギャラクシティ」にある遊び空間とアート空間による複合体験空間「スペースあすれちっく」。この他、創造力を育む「ホワイトあとりえ」、デジタル遊び空間「デジタルきゃんぱす」など、とにかく子どもが主体的に関わる空間が用意されている。コミュニティデザインとスペースデザインの両者によって、地域の課題解決をした好例だ(撮影:クドウオリジナルフォト)