マインドストーリーで
構成を組み立てる

 ミュージアム全体の構成は、洪が言うところの「マインドストーリー」によって構築された。マインドストーリーとは、来場者に芽生えるであろう気持ちの流れのことだ。それらの検討は、雑誌の編集にも似ている作業で、順番が大切になる。

エンターテインメントと学術文化の要素を融合、<br />マインドストーリーを軸に事業主の経営課題を解決「はじまりの部屋」では、プロジェクションマッピングで、古代から現代までさまざまな時代の宇宙観を表現。ICTを活用した演出で来館者の気持ちをつかむ(撮影:フォワードストローク)

 エントランスでは、雑多な日常から気分を切り替えてもらうため、あえて音と照明のみで演出した暗いトンネルを用意。そこを潜り抜けると、古代から現代までの人類の宇宙への想いを表現したプロジェクションマッピングを利用した「はじまりの部屋」が待っている。

 次に来るのが、ミュージアムのメインとも言える高解像度の「シアター宙(ソラ)」。ふつう宇宙は見上げるものだが、ここでは宇宙を見下ろす。視点の変化も表す発想で、プロジェクター12台を駆使した世界初の映像システムであり、星空や宇宙ステーションから見た地球など約10分間の迫力のある映像が展開される。来館者はここで宇宙空間に放り出され、リサーチセンターのある「サイエンス」のコーナーに向かう。宇宙への関心が高まっているので、最先端の学術的な展示にじっくり向かい合う気持ちになっている。

エンターテインメントと学術文化の要素を融合、<br />マインドストーリーを軸に事業主の経営課題を解決床下に備えられた直径11mの「シアター宙(ソラ)」。ISS(国際宇宙ステーション)から見た地球の実写映像など、高精細な映像が展開。足元まで広がるスクリーンで、宇宙体験を味わうことができる。制作にあたって、模型やCG、実寸でのデモなどを重ねて検証。星空の映像もハワイのマウナロアで撮影するなど、素材集めにも大きな労力がかかっている(撮影:フォワードストローク)

 その後は、体感型のコンテンツなどで構成されるエンターテインメント性の高い「イマジネーション」の空間、そして宇宙に関わる名言を映像で紹介する「コトバリウム」やユニークな撮影スポットがある「つながる場所」、グッズ販売の「TeNQ宇宙ストア」へと続く。

 完成後の来訪者からは、「いろいろな楽しみ方ができて長く滞在した」「東大の研究室があってリアルタイムに宇宙の研究の成果がわかって面白い」「最新の映像体験が楽しい」など想定通りの解答が得られ、東京ドーム側からも、当初の目論見どおり「コアな宇宙ファンからライトな層まで楽しんでもらえている」「若い女性が牽引する形の施設になった」などの評価を得たという。