2013年、JAL初の女性取締役となった大川氏。現在、女性活用を推進するプロジェクト「JALなでしこラボ」担当役員として、意識改革などに取り組んでいる。「単なる女性優遇ではない」改革の目指すところを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

女性活躍を極めることは
優しいのみの「女性優遇」ではない

――国の「女性活躍推進法」の成立に伴い、女性活用に本腰を入れる企業が増えています。「JALなでしこラボ」では、どのような取り組みをしていくのでしょうか。

 まずは法律への対応です。「女性活躍推進法」によって、社員数301人以上の企業は行動計画の策定などを義務づけられました。当然、これは進めて行かなければなりません。JALはさらに、連結子会社44社すべてにおいて、数値目標と行動計画を取りまとめました。これは社員数300人以下の子会社も含まれます。

“女性優遇”ではない真の女性活用とは何かおおかわ・じゅんこ
1977年入社。2006年機内サービス部長、09年客室品質企画部長を経て10年執行役員客室本部長、13年取締役専務執行役員客室本部長に就任。コーポレートブランド推進部担当。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 行動の柱としては、社員の意識改革と、それに伴うワークスタイル変革が挙げられます。それらを進めるために「なでしこラボ」では、社内外の方々とのコミュニケーションや事例研究などを通じてあるべき姿を研究していきます。

 ただし、女性を気遣うだけの、単なる「女性優遇」であってはなりません。たとえば現在、2人の子どもを連れて米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)に出向をしている女性整備士や、フランスのエアバスに出向している女性技術者がいます。

 もし会社や上司が「女性だし、子どもがいるから無理でしょう」と決めつけてしまえば、たとえそれが優しい思いやりの気持ちから発したものであっても、ブレーキになってしまう。これらの事例では、本人のやる気が強く、かつ上司を含めた周囲も能力を認めて出向が実現するように協力できたのです。

 そして、女性にもタフな職業観を持ってもらいたい。ただ、本人のみの意識が進んでいてもダメですよね。上司も含め、会社全体が女性活躍を推進する、という考え方に変わらねばなりません。

 私は客室乗務員として入社し、ずっと客室本部畑を歩んできました。昔の客室本部には結婚したら退職する、もしくは子どもができたら退職、という固定概念があったものです。しかし、私は社内制度が変わったので、子どもを産んでも働き続けることができました。

 こうした制度を利用した最初の年代でしたから、珍しい存在だったと思います(笑)。訓練部の教官で子どもを持った人は、私が初めてでした。それまでは教官は全員、子どものいない人だったのです。客室本部は女性が多い職場ですから、JALの中でも進んでいます。客室本部で当たり前にある「女性活躍」の風潮を、全社に広げていく必要があります。