経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第71回】 2016年2月9日
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武田 隆 [エイベック研究所 代表取締役]

オンライン上に現れた風通しのいい空間
「公共圏」が社会に果たす役割

【吉田純氏×武田隆氏対談2】

ソーシャルメディアを語る上でこれから重要なキーワードとなる「公共圏」とは何か?を明らかにし、その可能性を模索する対談の第2回です。オンラインコミュニティの普及により、再び注目が集まりつつある「公共圏」とはどのような概念なのか。京都大学教授であり社会情報学者の吉田純先生と共に、第1回に続きユルゲン・ハーバーマスやハンナ・アーレントなどの論考を手がかりに、政治システムや経済システム、私的生活圏との関係性の中で「公共圏」を整理し、その価値を考えていきます。

経済について議論するのは、
「古い」と考えられていた時代があった

吉田純(よしだ・じゅん)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学教育学部卒業。文学博士(京都大学)。専攻は、社会学、社会情報学。「情報化」「ネットワーク 化」を軸とする現代社会のマクロな構造変動と、ミクロな人間の行為/コミュニケーションの変容との関係について研究。現在とくに、インターネット 社会における「公共性」(コミュニケーション空間としての「公共圏」や知的共有財産としての「公共財」)をめぐる問題を中心的なテーマとしてい る。主な著書に『インターネット空間の社会学 ――情報ネットワーク社会と公共圏』(世界思想社) 『情報秩序の構築』(早稲田大学出版部、共著)『応用倫理学講義3 情報』(岩波書店、共著)「情報公共圏論の再検討――アーレントの公共性論を手がかりとした試論――」(早稲田社会学会『社会学年誌』46号)『都市とは 何か』(岩波書店、共著)等。2001年テレコム社会科学賞、日本社会情報学会研究奨励賞を受賞。

武田前回、ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスが説く“公共圏”には、政治的意見がひとつに集約されることを存在価値としたことによるバイアス(偏り)があり、その批判として、多様性を重視するハンナ・アーレントの公共空間への考え方が再注目されるようになったという流れを追いかけました。そして、アーレントの公共空間の特徴であるふたつ、「現われの空間」と「共通世界」についても解説いただきました。

吉田 はい。

武田 ハーバーマスの公共圏論は、「経済システム」についてほとんど言及していないという欠点も指摘されています。ハーバーマスはなぜ、経済の問題について語らなかったのでしょうか?

吉田 それにはいろいろな解釈がありうるのですが、ひとつにはハーバーマス的な公共圏概念の由来によるものがあります。前回申し上げたように、ハーバーマスの言う公共圏は、18世紀に盛んに見られた、ブルジョワジーたちの<文学や芸術をめぐる議論の場として生まれた「カフェ」や「サロン」>にルーツがある。なので、そこから発展した西洋近代的な公共圏における重要なテーマは、ブルジョワジーの共通の利害を国家や政治システムに対抗して主張することだったわけですね。

武田 そもそも経済に関するテーマは、わざわざ市民の間で討議しなくても、勝手にまわっていくものだと考えられていたのかもしれないですね。

吉田 そうですね。それと、もうひとつの理由として、ハーバーマスは、20世紀後半の「新しい社会運動」を踏まえて、<親密圏で発見されたテーマを公共圏で討議し合意形成を図る>をという流れを示し、現代社会に成立する公共圏について論じたということがあります。

武田 隆(たけだ・たかし) [エイベック研究所 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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