「幸せ食堂」繁盛記
【第二十回】 2016年1月26日 野地秩嘉

食べたいものは何でもある?
食いしん坊も極まれり。
栃木県は日光に、心躍るスーパー食堂あり

和食、中華、イタリアンが食べられる店

 日光の東照宮へ向かう通りにある「食堂すずき」。看板に大きく「喰」とあり、「和中伊」の3文字がある。和食、中華、イタリアンの各種料理がありますという意味だろう。

和食、中華、イタリア料理が食べられるという主張の込められた店構え。中華は、人気の黄金炒飯やラーメンも

 昭和の時代、地方都市に行くと駅前には必ず寿司、天ぷら、うなぎを出す和食店があった。また、大衆食堂には丼物とラーメン、餃子が混在していた。いわばそれが普通だったけれど、平成になってから28年も過ぎると、昭和では「普通」だった多種の料理を提供する飲食店がめったに見られなくなった。そんな、和中伊の3ヵ国の料理を出す大衆食堂が「食堂すずき」だ。

 親子丼(950円)、スタミナ焼肉定食(800円)、刺身湯葉(600円)といった和食。マーボー豆腐(1100円)、黄金チャーハン(880円)、湯葉入り豆乳ラーメン(1200円)といった中華もの。カルボナーラ(1400円)、ピザ(1600円 デザート付き)、リゾット、ニョッキといったイタリア料理の数々。

霧降高原牛サーロインのグリル。和豚もちぶたロースのカツサンド等々、迫力の肉料理の数々。ピッツァマルゲリータ、アーリオオーリオペペロンチーノ、セッピエネーロ(イカスミ)などのパスタは、イタリア料理店で修業したシェフの得意技

 加えてビビンバ、栃木名産のもち豚のカツサンドもある。和食、中華、イタリアンを揃えているというよりも、食べたいものは何でもあるといった表現が正しいような気がする。しかもボリューム満点で、かつ本格的だ。

 だから、食堂すずきではストレスが発散できる。まずビールを頼んでピザを食べる。刺身湯葉で日本酒を飲む。その後、白ワインでパスタを食べる。赤ワインをもらって、もち豚のステーキ(とんテキ)を平らげる。

 さらには日光の名物、天然氷のかき氷がある。常連は氷イチゴ、氷メロンではなく、氷にカルーアミルクを注いだものを食べる。食べて飲んで、氷で酔っぱらうことができる。

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野地秩嘉 1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。出版社勤務、美術プロデューサーなど を経て、ノンフィクション作家に。食や美術、海外文化の評論、人物ルポルタージュ など幅広く執筆。近著に、「TOKYOオリンピック物語」「イベリコ豚を買いに」「打 ち合わせの天才」「アジア古寺巡礼」「アジアで働く いまはその時だ」など。


「幸せ食堂」繁盛記

この連載は、味がよく、サービスも悪くなく、値段はリーズナブルで、しかも、できればハイサワーやホッピーを置いている店のグルメガイドだ。ここで紹介される店は、金持ちの社長やグルメ評論家はまずいない。著者は、そういう店を「勤労食堂」「国民酒場」と呼ぶ。そこでは客が微笑しながら食べている。ほほえみながら食べている人と一緒にいることは至福だ。人生の幸せは勤労食堂もしくは国民酒場にある。

「「幸せ食堂」繁盛記」

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