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スティグリッツ教授の真説・グローバル経済

ユーロの失敗を認めて進むことも解決策の一つだ

ジョセフ・E・スティグリッツ [Joseph E.Stiglitz]
【第4回】 2010年6月22日
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ジョセフ・E・スティグリッツ
(Joseph E. Stiglitz)
2001年ノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。イェール大学教授、スタンフォード大学教授、クリントン元大統領の経済諮問委員会委員長、世界銀行上級副総裁兼チーフエコノミスト等を歴任。現在はコロンビア大学教授。

 ギリシャの財政危機によってユーロはその存続自体が危うくなっている。ユーロが生まれたとき、それが長期的に生き残れるかどうかを多くの人が心配した。すべてが順調にいっていたときは、その心配は忘れ去られていた。

 だが、ユーロ圏の一部が強烈な負のショックに見舞われたら調整はどのように行われるのかという問題は、消え去ることはなかった。為替レートを固定し、金融政策の権限を欧州中央銀行に委譲したことで、各国政府が景気後退を防ぐために使える二つの主な景気刺激手段が使えなくなった。その代わりになりうるものは何なのか。

 ノーベル賞経済学者のロバート・マンデルは、単一通貨が成功する条件を並べ上げた。ヨーロッパは当時その条件を満たしていなかった。そして今もなお満たしていない。労働者の移動を阻む法的障害が取り除かれたことで単一労働市場が生まれはしたが、言語的・文化的差異のためにアメリカのような労働市場の流動性は達成不可能なのだ。

対GDP比で見れば
ドイツの経常黒字は中国よりも大きい

 そのうえ、EUには深刻な問題に直面している国を支援する方法がない。失業率20%、特に若者の失業率は40%を超えているスペインの例を考えてみよう。スペインの財政収支は金融危機の前は黒字だった。金融危機後にはGDPの11%を超える赤字になった。だが、EUのルールでは、スペインは今、支出を削減しなければならないのであり、それはおそらく失業を悪化させるだろう。経済成長が鈍化するので、スペインの財政収支の改善は微々たるものにとどまるかもしれない。

 ギリシャの悲劇によって、政策決定者たちが(財政支援を含む)より大規模な協力がなければユーロは成功しないと悟ってくれることを期待する向きもあった。だが、ドイツ(およびその連邦憲法裁判所)は、俗論に従ったこともあって、ギリシャに必要な支援を与えることに反対してきた。

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スティグリッツ教授の真説・グローバル経済

米国をはじめとする各国の経済政策、気候変動、金融規制等々、世界の最重要テーマを、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授が明快に解き明かす。

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