株価下落の大きな要因の一つとされる原油安。生産増と新興国経済減速による需要減で供給過剰なところに、米国の利上げによる流動性縮小が追い打ちをかけ、下げ止まる気配が見えない。

 原油価格暴落に歯止めがかからない。1月15日、終値で1バレル30ドルを割り込んだ原油価格の代表的指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、20日には終値で同26.55ドルと12年半ぶりの安値を付けた。14年前半までは同100ドル台で推移していたから、1年半でなんと7割強も下落したことになる。

 暴落の第一の理由は、供給過剰だ。原油価格が下落していく過程で、シェア確保にこだわる産油国は減産など需給を改善する施策で合意できなかった。

 WTIが同70ドル台に下落していた14年11月末に開かれた石油輸出国機構(OPEC)の総会では減産が見送られ、その後、同50ドルを割り込む。同40ドル前後で推移していた15年12月の総会では、減産どころか日量3000万バレルの生産枠を撤廃し、各国が自由に生産してもいいこととなり、原油価格は同30ドル台に突入した。

 足元の生産量は拡大している。1年前と比べて、サウジアラビアの生産量は日量60万バレル増加、イラクは同80万~100万バレル増加している。価格下落で採算が取れなくなり、シェールオイルの生産が減少したことで米国全体の生産量は同40万バレルほど減少しているものの、それを上回る増産が進んでいる。16日に欧米による経済制裁を解除されたイランは輸出を再開、同50万バレル程度生産量を増やす見通しだ。

 一方、中国をはじめとする新興国経済減速で需要は伸び悩む。これに、暖冬による日米欧など先進国の暖房用の需要停滞が加わる。

 結果として、供給過剰が続く。国際エネルギー機関(IEA)によれば、15年第4四半期は、日量183万バレルの供給超過、16年前半も同150万バレルの供給超過が続く見通しだ。

 これに追い打ちをかけるのが、14年1月のテーパリング(資産買い取りの縮小)開始から始まった米国の金融引き締めに伴うドル高、過剰流動性の縮小である。

 原油をはじめとするドル建てで表示される商品価格の相場は、ドルが高くなると下落する傾向にある。下図を見てほしい。14年後半からドルの名目実効為替レート(貿易量で通貨別に加重平均した、総合的に通貨の高低を測る指標)が上昇し始めたのと正反対に、原油価格が下落している。

 15年12月には、米連邦準備制度理事会(FRB)が8年ぶりの利上げに踏み切った。これまで低利で調達され、株式、商品などの市場に向かっていた資金の流れが逆流し始めている。年始からの原油価格の下落加速は、「米国の利上げが最大の要因」(新村直弘・マーケット・リスク・アドバイザリー代表取締役)ともいえる。