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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

無名の中国“地ビール”メーカーはなぜサッカーW杯に広告を出せたのか

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第7回】 2010年6月24日
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 先週、このコラムの記事を書き終えて編集部に送信した後、急いでリビングルームに移動し、W杯の日本対カメルーンの生中継観戦に臨んだ。競技を観戦すると同時に仕事をやり遂げようとした。記事に取り上げたバドワイザーを生産する米国のビールメーカー、アンハイザー・ブッシュの広告や、英利緑色能源控股有限公司の広告がテレビ画面に大きく映されているのを写真に収めようと、手元にカメラを置いた。

 一番理想的なのは、アルファベットの商品名Budweiserの横に「百威」という中国語ネーミング、そして「中国・英利」という4文字が大きく映されている画面だ。

 だが生中継が始まってまもなく、テレビ画面になんと「哈爾濱啤酒 Harbin beer」という広告が映し出された。なぜ中国の一地方の地ビールである哈爾濱ビールの広告がW杯の競技場に出てきたのかまったく分からず、一瞬狐につままれたような気がした。

 私の見間違いかもしれない、と思いながらその広告がまた画面に出るのを辛抱強く待った。すると今度ははっきりと見えた。間違いなく「哈爾濱啤酒 Harbin beer」だった。そうなると、その背後関係を究明したいという気持ちが高まってきて、居てもたってもいられなくなった。

 日本対カメルーンの前半戦が終わり、休憩時間になったところで急いで書斎に戻り、インターネットで事実関係を調べた。するとそれは哈爾濱ビールの広告というより、バドワイザーというブランドをもつアンハイザー・ブッシュ・インベブだと理解したほうが正確だということが判明した。

 哈爾濱ビールは、若い頃私が「下放」していた黒竜江省にある会社で、1900年に設立され、ビールメーカーとしては中国で最も古い歴史を誇る。しかし、中国でのシェアは微々たるものだった。2004年、アンハイザー・ブッシュが同社の株式の99.66%を購入し、その傘下に収めた。さらに2008年に、ベルギーのビール大手、インベブがアンハイザー・ブッシュを買収し、アンハイザー・ブッシュ・インベブという新しい会社が誕生した。ビールメーカーの買収規模においても、ビールのシェアと売上高においても世界一ということで話題になった。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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