不動産投資が一巡した中国で行き場を失うチャイナマネーが、にわかに活路を見出した。向かう先は映画産業である。廉価な海賊版が映画産業の発展を阻害したのは過去の話。今、中国では映画などコンテンツ産業が、新たな投資先として脚光を浴びている。

 2015年、中国の映画産業が大きく動いた。中国の興行収入は、前年の300億元(約5700億円、1元=当時約19円)から46.6%増の440億元(約7920億円、1元=約18円)と大きく伸びた。観客動員数も10億人を突破した。映画館を訪れる観客は過去5年で毎年平均30%超と、爆発的な増加をたどっている。

 中国各地で進んだ商業施設の開発とともに、軒並み数を増したのがシネマコンプレックスだ。中国の映画産業における市場調査会社・芸恩諮詢のレポートによれば、2014年、全国の映画館は5500カ所に増え、スクリーン数も2万3000スクリーンに増えた。観客も若く、19~40歳が9割近くを占め、さらにその半分を19~30歳が占める。

 この変化をどう見るのか。これまで数々の日中合作映画を手掛けた映画監督に張加平氏がいるが、同氏は近年の中国の映画産業についてこうコメントする。

「中国の映画産業は今、黄金時代を迎えています。確かに不景気で経済成長も低迷していますが、それだけに『映画は次なる投資先』と大きな期待が集まっているのです」

海賊版DVDの激減で
映画の観客数が増加

 黄金時代といわれる背景には、海賊版DVDの流通が減ってきたことがある。2000年代までは、「映画が封切られたその当日に海賊版が出回る」などは日常茶飯事といわれるように、海賊版の存在が映画館での鑑賞を遠ざけてきた。このため、コンテンツ産業の発展は期待薄とされてきた。

 だが、張監督が「北京など都市部では海賊版DVDの販売が以前に比べてだいぶ減った」と話すように、ここ数年の取り締まりとともに産業の健全化が見られるようになった。2015年に封切りされ、中国で興行収入1位を記録した国産映画「捉妖記」(英題:Monster Hunt)に至っては、海賊版の氾濫はほとんどなかったとまでいわれている。

 また、近年、地下鉄やバスで通勤時間中にスマートフォンで映画鑑賞をする乗客が増えているのも大きな変化だ。中国の映画鑑賞は明らかに「海賊版」から「インターネットからのダウンロード」に移行しているのだ。