国家統計局が1月19日に公表した統計によると、昨年の成長率は6.9%で、1990年以降初めて7%を下回り、今年の成長率も7%を下回ると見られている。年明けに株価下落が中国を襲い、中国経済の行方が不安視されている。中国経済の先行きは本当に暗いのか。筆者は、現在の中国は成長パターンの転換期にあると考える。

 2008年のリーマンショックによる経済危機が起きた当時、中国は大型公共投資に頼る景気浮揚策を打ち出し、経済危機による影響の緩和をはかった。だが、公共投資中心の経済政策は、財政赤字の累積や公害等による環境問題などが起こるため限界がある。

 そのため、ここ数年の「政府活動報告」には過剰生産能力の廃棄が提起されており、これまでの投資に頼る経済政策から消費による経済浮揚への転換をはかっている。なかでも個人消費の拡大は重要なファクターとなる。今後の中国で個人消費が伸びるのか。また、個人消費拡大には何が必要なのだろうか。

消費拡大を目指す
「サプライサイド」の改革

 中国商務部の統計によると、2015年1月~11月の中国の消費財販売額の伸びは10.6%であり、第3四半期の経済成長に対する消費の貢献度は58.4%であった。数字だけ見れば消費は拡大していると見えるが、中国商務部市場動向・消費促進司の王斌司長は中国メディアの取材に対し、「消費が良好なのは、投資と輸出に比べてであり、消費自体は落ちている」と分析している。第12次五ヵ年計画時は消費が年々下落し、2011年に17.1%であった消費の伸びは、2015年は10.7%にまで下落している。

 その原因について1月11日付けの中国新聞ネットの報道は、現在の中国の供給能力が必ずしも現段階での人々の需要に見合っていないために、商品とサービスの効果的な供給がなされておらず、流通システムも効率が悪く、消費環境もよくないことが原因であると分析している。

 改革開放前の中国は、ソ連式の計画経済体制であり、当局が各企業の生産するモノを決めるため、生産者は上の指示にしたがってモノを作ればよかった。だが、改革開放後も競争を前提とする市場経済の考えに合わせられず、古い考えから抜けきれていない生産者も存在する。

 サービス業を例にとると、サービスを提供する人は顧客を満足させることを第一に考えるべきであるが、彼らは能面のような表情で、上から命じられた業務を淡々とこなしていく。

 財やサービスを供給する側が需要に適応していないという状況を受けて、昨年開かれた中央経済工作会議で「新たな供給の創造と供給の質の向上を通じて有効供給を拡大する」という「サプライサイド」の改革方針を打ち出した。

 この目的は、これまでの「成長のエンジン」だった石炭や鉄鋼産業の発展を促さず、大規模公共投資によって生み出された過剰な生産能力を廃棄して、新たな「成長のエンジン」を作り出すことにある。それは、創造革新型の新興企業であり、それらの企業が中国人の高度化したニーズを満たし、消費を活性化させるカギとなる。