社長の言葉はビジョンに溢れている

NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターをしていたころにも、同じような体験をしました。カメラが回っているあいだは当たり障りのない真面目な話ばかりしていた社長さんが、カメラが止まった途端に、いい話や本音をぽろっと口にすることが少なくなかったのです。

そのため、ディレクターさんからは、「『今日はありがとうございました!』という締めの言葉を発したあとからが、本当のインタビューだと思っておけ」と言われたこともあります。
実際、「収録終了のかけ声があっても、カメラは止めないように」という指示もあったほどです。

一方、「社長トーク」は音声だけの番組ですが、第三者の存在は、カメラと同じくらい、社長さんに気を遣わせるものなのです。
そこで収録のときには、社内の人が視界に入らない「密室状態」をあえてつくり、ほかの人の視線を気にせず自由にお話しいただける環境をつくっています。

「逆に、密室のほうが社長さんは緊張するのでは?」と思われるかもしれませんが、そこは私が努力で補うべき点です。社長さんに気持ちよくリラックスしてお話しいただけるよう、聞くことに徹する姿勢で対話に臨んでいます。

雑誌のインタビューなどでは、広報担当者が事前に打ち合わせを求めてきたり、記事の内容を秘書がチェックしたりすることがほとんどです。たしかに、会社のことを広く正確に伝えるためには、こうしたプロセスが大切なのかもしれません。

しかし私は、企業のリーダーに自由に話してもらい、社会の未来を切り拓き続けている人間としての思いや哲学を多くの人に聞いていただきたいのです。社長の言葉は、仕事と人生に関わるビジョンに溢れていますから、多くの人に勇気と希望を与えてくれるはずです。