「一国の総理なのだから、スピーチといっても、その場で原稿を読むだけだろう」と思っていたのですが、かなり入念にリハーサルをしているご様子で、どんなことにも手を抜かず徹底的に準備されている姿が非常に印象的でした。

総理のスピーチのあと、会場にいた何人かの海外のトップリーダーたちに「日本の総理のスピーチはどうでしたか?」と感想を聞いてみたところ、誰もが「彼は覚悟が定まっていたね」「自信に溢れた話し方だったよ」と評していました。

各国の首脳が何名もスピーチを行うダボス会議のような場では、話の内容よりも、その話し振りが評価の対象となります。安倍総理が覚悟や自信を評されたのは、とても名誉なことです。

見えないところでの繊細で緻密な準備と大胆なパフォーマンス――これこそがトップリーダーに求められる姿なのだろうと思った瞬間でした。

 

成長するリーダーは、
「傷つきやすい」

繊細さというのは、時として「傷つきやすさ」にもつながります。おそらく、多くのリーダーは本来傷つきやすいのだと思います。

これをお読みいただいている方にも、「私はリーダーなのにちょっとしたことで傷ついたり、悔やんだりしてしまう……」と気にしている人がいるとしたら、むしろそのことはポジティブに捉えるべきでしょう。

「社長トーク」では、過去の失敗について聞くことが多々あります。どのリーダーたちも、何かしらの大きな失敗・危機を味わい、それを乗り越えてきた経験を持っています。そして、誰もが過去の失敗を細部にわたって記憶に留め、そのときの痛みをいまも強く持っています。

収録中には「もう過ぎたことだし、いまでこそ笑って話せますがね……」と言いながら、ある種の笑い話として失敗談を話してくださいますが、収録が終わってリラックスした拍子に、思わずポロっとこんな言葉が飛び出すことがあります。