橘玲の世界投資見聞録 2016年2月4日

とにかく無駄が多いインドのパスポートと交通事情について
[橘玲の世界投資見聞録]

 昨年末に南インドとスリランカを訪れたのだが、そこで感じたことをいくつか。まずは、インドのパスポートと交通事情について。

 インドのVISA取得手続きが複雑で、かつ規則が頻繁に変わることはよく知られている。これまでもそれぞれの国のインド大使館・領事館で旅行前にVISA手続きを済ませておくのが基本だったが、到着した国際空港でアライバルVISAを取得することもでき、そのルールが明確になっていないため混乱が続いていた。

 大使館などで手続きしようとすると申請と受領の2回行かなくてはならず郵送は不可、それが無理なら専門の業者に依頼するなど面倒だ。一方、アライバルVISAは空港で発給を断られることもあり、その場合は自費で日本に戻ることになると航空会社が注意喚起していた。この曖昧な状況は、2014年末からe-TOURIST VISA (eTV)というオンラインVISA申請が始まり、それにともなってアライバルVISAが廃止されたことで解消された。現在はVISAを事前に取得しているか、e-TOURIST VISA の申請受領書(電子メールのプリントアウト)を持っていないとインド行きの便に搭乗できない。

インドよりスリランカのほうが手続きは楽

 実はスリランカも同様のオンラインビザ(ETA=Electronic Travel Authority)を採用している。今回はどちらの国もオンライン申請してみたので、まずは両者を比較してみよう。

(1) スリランカは30日以内に2回まで入国できる観光ビザ(US$35)、30日以内に複数回入国できるビジネスビザ(US$40)、2日以内の滞在のトランジットビザ(無料)のほか、料金が若干高くなるがコロンボ国際空港でアライバルVISAが取得できるなど制度に柔軟性がある。それに対してインドのe-TOURIST VISAは30日以内の観光、短期商用、療養を目的とし、1回の入国しか認められない(申請料金US$60)。

(2) スリランカのETAの申請手続きはシンプルだが、インドのe-TOURIST VISAは記入項目が多く、さらにはパスポートのコピー(PDF)と規定のサイズに加工した写真(JPEG)を添付しなければならないなど煩雑。

(3) スリランカのコロンボ国際空港では、入管でパスポートを提示すればETAの申請状況が確認でき、自動的にVISAのシールが出力されて、それをパスポートに張るだけ(ETAの申請受領書を提示する必要もない)。しかしインドでは(今回はベンガルール国際空港を利用)予想外に時間がかかった。e-TOURIST VISAで入国した旅行者はまだそれほど多くないと思うので、ここではその手続きを紹介しておこう。

コロンボ国際空港                 (Photo:©Alt Invest Com)

 

 インドは近年のナショナリズムの勃興で歴史の見直しが進められていて、イギリス植民地時代の名称が次々と変えられている。ボンベイがムンバイに、カルカッタがコルカタに、マドラスがチェンナイになったように、南インドのベンチャー都市バンガロールも「ベンガルール」の呼称が使われるようになってきた。

 ベンガルール国際空港に到着してPassport Controlに向かって歩くと、e-TOURIST VISAの表示が出てくる。インドの空港では、通常のVISAとオンラインVISAは別のカウンターで手続きすることになっている。

 e-TOURIST VISA用のカウンターは2つで、私が行ったときはアラブ系の家族(夫婦と姉、弟で、母親は目だけを出したブルカ姿)が一組いただけで、ほとんどの旅行者は一般VISAの窓口に向かっていった。

 窓口の手前にVISA申請用紙が置かれているので、まずはそれに記入する。オンラインVISAを申請するときにパスポート情報はもちろん宗教や婚姻状況、渡航履歴に至るまで詳細に入力しているのだから二度手間だと思うのだが、この国ではそんなことに文句をいっても仕方ないので黙って指示に従う。

 申請書を書き終わって並ぶと、アラブ系家族の両親の手続きを終えた職員がやる気なさそうに「Closed」の札を置いて出て行ったため、姉弟の後ろに並ぶことになった。一組しかいないのだからすぐに終わるだろうと思っていたら、順番が回ってくるまでに10分以上かかった。

 なぜこんなに時間がかかるのか、その理由は自分の番になってわかった。

 まず、パソコンに接続したカメラで顔写真を撮る。申請時に顔写真のJPEGファイルを添付しているのだからそれでいいと思うのだが、もういちど同じことをやらなければ気がすまないらしい(ブルカの女性はどうしたのかはわからなかった)。

 しかしそれよりやっかいなのは、両手10本の指紋を記録することだ。この指紋読取機の精度がものすごく悪く、何度やってもうまくいかない。係官の説明だと、「ガラスが曇っているとダメ、指が湿っているとダメ、強く押しつけるとダメ、長く押していてもダメ」で、かなりのコツがいるという。ここまでで下手すると5分くらいかかる。

 残りの5分は、コンピュータのモニタに向かってひたすら難しい顔をしている(なにか訊かれるわけではない)。それが終わるとようやくVISAのスタンプを捺し、また難しい顔に戻って日付などを手書きで書き込む。ベンガルール空港は国際線の利用客がそれほど多くないが、デリーのインディラ・ガンディー国際空港のような海外とのハブでも同じようなことをやっているかと思うとちょっと不安になる。

 ようやくVISAを取得してスーツケースの受取り場に行こうとすると、そこに別の係官がいてパスポートのVISAを確認される。そもそもVISAがなければ入管を通れないのだが、同じことを繰り返すのがインド流なのだろう。

 ちなみに、e-TOURIST VISAのスタンプは一般VISAとはデザインが異なる。インドではホテルにチェックインするとき必ずVISAのページをコピーするが、ホテルのスタッフはほぼ確実に探せないので、最初に教えてあげる必要がある。

ベンガルール国際空港               (Photo:©Alt Invest Com)

 


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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