既得権者優遇で日本は世界の“産業革命”から取り残されるICTムーブメントは様々な分野で進起きていますが、政府の後押しが表層的になっている印象は否めません

 新たなICTブームが起き、市場は盛り上がりをみせています。ちょっと前まではクラウド、ビッグデータが主なキーワードだったのですが、今はIoT、AI、フィンテック、シェアリング・エコノミー(Airbnb、Uber)といった新たな流行り言葉を新聞で見ない日はないほどです。

 しかし、気になるのはそれらに関する報道が表層の動き、つまり製造業(IoT)や金融(フィンテック)といった個別の分野での新しい取り組みやサービスの説明に終始し、それらのムーブメントの本質が議論されることが少ないということです。それが影響してか、これらのムーブメントを後押しする政府の取り組みも表層的なものばかりとなっているように思えます。

「第4次産業革命」は
世界に何をもたらしているのか

 それでは、これらの流行り言葉のすべてに共通する本質的なポイントは何でしょうか。私は個人的に、それは市場競争のパラダイム転換ではないかと考えています。

 近代経済学の祖であるアダム・スミスは1776年に『国富論』で、自由競争により分業が進展して経済の生産性が向上し、国が発展すると述べました。ここで重要なのは、アダム・スミスが想定していたのは、自営業者や家族経営の企業など、今の言葉で言えば中小零細企業が元気に競い合う、分散的・分権型の市場を想定していたということです。

 ところが、『国富論』が書かれたのと同時期に始まった第1次産業革命(蒸気機関による工場の機械化)、19世紀末からの第2次産業革命(石油と電気による大量生産・大量輸送)、更には金融システムの高度化により、気がつくと市場は大資本(=大企業)が労働者を使い倒し、財・サービスを大量生産して大量消費させる中央集権的なものになってしまいました。