◎丸投げの弊害(3):IT構築を機に、業務を整理できない

「業務を整理できない」と言っても、業務改革というほど大げさな話ではありません。
 ITを作る際に「際限なくある業務パターンを、この10パターンに集約できればコストが劇的に下がる」というような場面がよくあります。

 つまり、シンプルで使いやすいITを安く作るためには、まず業務を整理する必要があります。「この業務はどうあるべきか」を判断できる人がプロジェクトに関与していれば、複雑な業務も、案外シンプルになるものです。

 しかしSI会社に丸投げしているプロジェクトでは、不思議なことに、そういう議論がほとんど起きないのです。

業務部門「ウチの業務はこんな感じです」
SI会社「では、お客様の仰るとおりに作ります(すいぶん複雑だけど、そのほうが儲かるし、まいっか…)」

 という、一方通行の会話だけでことが進んでいくからです。

◎丸投げの弊害(4):ITリーダーを育てられない

 SI会社にIT構築を丸投げすると、プロジェクトで経験を積むのはSI会社の社員ばかり。
 自社の社員は、できあがったITについて詳しくないので、メンテナンスもずっとSI会社に頼りっぱなしになります。

 そしていちばんマズイのは、「大規模プロジェクトのリーダー」という、会社にとっていちばん重要な人材を育てるチャンスをみすみすフイにすることです。

 経験を積めないから、育てられない。
 育てられないから、次回もSI会社に丸投げせざるを得ない。
 完全な悪循環です。

 そろそろ、わたしが『会社のITはエンジニアに任せるな!』という本を書いた理由をご理解いただけたでしょうか。

 プラント型ITを育てる仕事は、会社にとって死活的に重要なコア業務。これを外の会社に丸投げするべきではないのです。