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 FXなども、スマホ上で取引が可能だ。故人がパソコンではなくスマホで取引をしていたなら、パソコンを調べても形跡が出てこないこともある。となれば、逆にこちらは故人のスマホを調べなければいけない。

 このようなトラブルを目の当たりにしてきた萩原氏は、先のシミュレーションが現実にならないよう、その対策をアドバイスする。

「デジタル遺品のトラブルで多いのは『異性関係』と『お金関係』。特にお金関係の場合は、遺族がより深刻な事態に陥りやすいと言えます。だからこそ、デジタル遺品トラブルが起きないよう、生前から準備しておくことが大切です」

経済状態の開示とエンディングノート
常日頃からやっておきたい「二大対策」

 では、常日頃からどのような準備が必要なのか。萩原氏は、「経済状態の開示」と「エンディングノートの作成」を勧める。

「経済状態の開示」とは、「生きているときに、自分の持っている金融資産やローンなどを、必ず家族に開示しておくこと」だと萩原氏は言う。そしてその際、インターネットバンキングやFX口座などのID・パスワードを、残らず家族に教えておくことが必要なのだという。

「自分が突然亡くなってしまった場合のために、常日頃から家族に資産開示する機会を設けるべきです。IDやパスワードを教えるのは躊躇するかもしれませんが、『もしこのパスワードを自分が生きているうちに使ったら相続させない』という条件にしておけば良いでしょう。他人がログインしたらわかりますから、このような条件をつけておくだけでセキュリティは守られます」

 そしてもう1つの準備が「エンディングノートの作成」だ。エンディングノートとは、自分が死んだ後にしてもらいたいことを生前に書き記しておくノート。ただし、「市販のものはデジタル遺品トラブルを避けるための目的には適していない」と萩原氏。ここで言うエンディングノートとは、「いつ死んでも自分の資産がわかるような取引明細」のことを指すそうだ。

「インターネット上で取引している資産については、銀行や取引の方法、取引金額の明細などを帳簿のように細かく書き記しておきます。もしも自分が亡くなったときに、遺族がそのノートを見れば現状の資産状況をすべて把握できるようにしておくのです」

 取引する口座や取引金額は、時々刻々と変わっていく。その中で「今どんな口座にどれだけのお金があるのか」「どんな取引状態にあるのか」をすぐわかるようにしておくべきだという。萩原氏は「このようなエンディングノートは、成人式を過ぎたら年に一度は書くべきです」という。