過去の「伝説の営業マン」は手本にはならない機械に仕事を奪われつつあると言われる営業マン。果たして、今後も生き残れる営業マンとは?

 皆さんの会社でも状況は同じだと思うが、今や会社にかかってくる電話の多くが、いわゆる「営業電話」である。知り合いならほとんどが携帯に掛けてくるし、仕事の場合は、緊急のことがない限りメールでやり取りするからだ。

「秋山社長はいらっしゃいますか?」

 営業電話は、さも知り合いのように名前を出してくる。きっと、彼らが作成した何らかの名簿に名前が書かれているのだろう。私もたまにそのような電話を受けるが、「はい、私ですが…」と答えた途端にベタな営業トークがはじまるのはいただけない。すぐに聞く気も失せてしまう。

 こんな発言をしたので誤解されたかもしれないが、私は「営業マン」が大好きだ。営業畑出身ではなく、商品を作るほうだったが、営業マンあってこその商品企画だった。

 何もないところから人的ネットワークを手繰り寄せて顧客候補にアプローチをし、商品の良さを語り(弱みをうまくごまかしながら)、受注を取りつけ、顧客と長く付き合いを続けていく……。その間には、ミスやクレーム対応に忙殺されることもあるが、それを逆手にとって絆を深め、ビジネス上の関係を超えた繋がりを作り出す。特定の顧客の予期せぬニーズが新時代の商品のあり方を示しているのではないかと情報を寄せてくれ、一緒に新しい商品の構想を作る…。

 こういったたくさんの「営業マン」との仕事を思い出しては、「良かったなぁ」「すごかったなぁ」と感じた日々を思い出すからだ。

 しかし、このような姿はどうも過去への郷愁のようなもので、今の時代には流行らない営業マン像のようだ。現在の企業を見てみると、顧客に深く食い込む営業マンも少なければ、顧客ニーズをもとに新商品開発を働き掛ける営業マンもほとんどいない。そもそもそのようなことは営業マンに要求されていないようだ。実際には、営業の工程を事務的にきちんと進めていくことにエネルギーが費やされている。