大正時代から現代まで、その時代の経済事象をつぶさに追ってきた『週刊ダイヤモンド』。創刊約100年となるそのバックナンバーでは、日本経済の現代史が語られているといってもいい。本コラムでは、100年間の『週刊ダイヤモンド』を紐解きながら、歴史を逆引きするのがテーマだ。今回は米国の住宅バブルが発生した初期まで逆引きする。(坪井賢一)

9.11後も住宅価格は急騰!
不透明な景気下で起きた「住宅ブームの異様さ」

 米国の住宅バブルはいつ発生したのだろう。「週刊ダイヤモンド」をさかのぼってみると、2002年7月6日号に掲載された加藤出氏(東短リサーチ取締役)によるレポート「米国景気の牽引車『住宅バブル』の熱狂にひそむ不安」にたどりついた。加藤氏はこう書き出している。

「米国の都市部やリゾート地で住宅バブルが発生している」。今から8年前(!)の記事である。続けて、

「同時多発テロ(注・2001年9月11日)後に一時急落したものの、住宅価格はクリスマスごろ(2002年12月)から再び上昇に転じているのだ。グラウンド・ゼロに近いマンハッタンのトライベッカ地区では、ロフトタイプのアパートの平均販売価格が今年(2002年)第1四半期に前期比24.8%の急騰をみせ、139万ドルの過去最高値を記録している。」(中略)

「景気の不透明感、株価低迷、新たなるテロの懸念が存在するなかでの住宅ブームは異様である。」(中略)いくつか理由はあるが、「大本で支えているのが、住宅ローン金利の低下であり、かつモーゲージ会社を中心とするアグレッシブな融資姿勢である。」(中略)

「政策金利引上げは住宅ローン金利の上昇に直結するだけに、グリーンスパンFRB議長の舵取りは困難を極めると思われる。」(加藤出、「週刊ダイヤモンド」2002年7月6日号)

 住宅価格が急上昇したため、人びとは買い替えの際に借金を増やし、ついでに別荘も買い始めている。クルマもそうだ。つまり、住宅バブルが米国の好景気を支えているため、FRBは政策金利を引き上げないだろう、という予測である。加藤氏の慧眼は見事に問題の端緒を捉えていた。