ZEHの基本は
高断熱性能の躯体

 家庭における消費エネルギーの収支をゼロにするだけなら、極論を言えば、大容量の太陽光発電システムでどんどん発電すればいいことになる、と赤池氏。

「しかし、それでは適切な住宅とはいえない。そこで15年12月、ZEHロードマップ検討委員会が『ZEHの定義と評価方法』(注2)をより具体的に策定しました」(赤池氏・以下同じ)

 それによると、ZEHは3段階の条件をクリアすることで実現される(右コラム参照)。

 第1段階は、エネルギーを極力必要としない住宅であること。つまり、高性能断熱材や高断熱窓などで躯体の外皮性能を高めた、高断熱・高気密な住まいであるということだ。

 具体的には日本を八つの地域に分け、それぞれに省エネ基準よりも強化した断熱基準をZEH基準値として設定。断熱性が高まれば冷暖房の使用頻度が減り、エネルギー消費量を削減できる上に、光熱費も抑えられる。

「外皮性能を高めることは、住宅における快適さの基本です。例えば日本では、毎年1万7000人もの人が、ヒートショックにより家の中で亡くなっています(注3)。原因は、家全体の断熱性が低いために、各部屋の温度差が大きくなるから。高断熱の家は快適なだけでなく、人の命を守る家、体に優しい家でもあるのです」

 第2段階は、第1段階をクリアした上で、エネルギーを上手に使う住宅であること。高効率エアコンや高効率給湯設備、エネファーム(ガスで電気を作り、発電時の排熱を活用してお湯を作るため、エネルギーの無駄がなく、CO2排出量も大幅に削減できる)など、最新の省エネ設備をアドオンすることで、消費エネルギーをさらに削減。省エネ基準より20%以上の省エネをZEH基準として設定した。

 第3段階は、第1段階・第2段階をクリアした上で、エネルギーを創る住宅であること。太陽光発電システムで自宅で電気を作り、消費量との差し引きで、ゼロ・エネルギーを目指す。

 さらに、家庭用蓄電池を搭載すれば、昼間、太陽光発電で作った電気を夜間に使用できる上、エネルギー面で自立した住宅となり、なおさら心強い。

 なお、ZEHの評価方法は、屋根の小さい都市部の狭小住宅や、日射が得にくい寒冷地の住宅では電気が作りにくいことを考慮。正味で100%省エネを達成したものをZEH、正味で75%省エネを達成したものをNearly ZEHとして評価する。

(注2)2016年2月8日時点では「案」の段階。今後、資源エネルギー庁にて開催される審議会(省エネルギー小委員会)の承認をもって正式に決定される予定。
(注3)東京都健康長寿医療センター研究所調査。