「感情」に訴えるプレゼン資料をつくる

 では、プレゼンの成否を決めるのは何か?
 プレゼン資料です。資料は、プレゼン本番のシナリオのようなもの。ポイントを押さえた資料をつくることができれば、本番ではシナリオに沿って話すだけでOK。どんなに口下手でも、万全の資料を用意できれば自信をもって話すことができます。優れた資料であれば、必ず相手からポジティブな反応を獲得することができます。

 これは、口下手だった私が断言します。私は、口下手だからこそ、「どうすれば、お客様の心に届けることができるだろう?」とプレゼン資料に工夫を凝らしてきました。そして、その結果、相手の反応が劇的に変わることを実感してきました。私が運営しているプレゼン・スクールの生徒さんも同じです。皆さん、プレゼン・トークに自信がない。だからこそ、学びにいらっしゃる。そして、短期間にめざましい上達を遂げます。だから、むしろ口下手だからこそ、プレゼンの達人になることができると、私は確信しているのです。

 社外プレゼン資料のポイントは2つ。「シンプル&ロジカル」であること。そして、相手の「感情」に訴えること。この2つです。

 まず第1に、「シンプル&ロジカル」でなければなりません。プレゼンにおいて最悪の失敗は「理解しづらい」ことです。ダラダラと要領を得ないプレゼンは誰にも聞いてもらえませんし、「あれもこれも説明しよう」と内容を盛り込みすぎると、聞き手は情報を整理しきれません。ですから、些末な要素はどんどんカットして、本当に重要な情報だけで骨太なロジックを組み立てる必要があります。

 あるいは、文字ばかりだったり、グラフが複雑だったり、理解するのに10秒以上かかるスライドもNG。一枚一枚のスライドも、パッと見た瞬間(できれば2.5秒)にピンと来るシンプルなものでなければなりません。

 これは、プレゼン資料の基本中の基本です。そして、社内プレゼンの場合は、この条件さえ満たせば合格。私の前著『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)にまとめたように、プレゼンする相手は社内の決裁者ですから、「利益に貢献するか?」「実現可能か?」「企業理念に合っているか?」という3つのポイントをシンプルかつロジカルに説明できれば納得してくれます。

 しかし、社外プレゼンはこれだけでは足りません。なぜなら、プレゼンの相手は、利害を共有する「身内」である社内の決裁者とは異なるからです。相手には、こちらのプレゼンを聞く「義務」はありません。興味をもってもらえなければ、聞いてもいただけない。だから、「そうそう、そうなんだよ!」「なるほど!」などと「感情」を刺激する表現をしなければなりません。ロジックだけでは、社外の人を納得させることはできないのです。

4つのステップで「感情」にアプローチする

「感情に訴える」のは、単に「シンプル&ロジカル」な資料をつくるよりも難易度は高いと言えます。しかし、これにも「型」があります。それをマスターすれば、誰にでも「心」を動かす資料を作成することができるようになります。

 大事なのは、相手の「感情の動き」を意識しながらプレゼン全体のストーリーを組み立てることです。ストーリーというと難しく聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。社外プレゼンのストーリーは、ひとつだけ覚えれば大丈夫。「(1)共感(「そうそう、それで悩んでるんだ」と共感してもらう)」→「(2)信頼(「この人の話は聞くに値しそうだ」と信頼してもらう)」→「(3)納得(「この人の言うとおりにすれば、たしかに問題は解決しそうだ」と納得してもらう)」→「(4)決断(「よし、やってみよう」「詳細の商談に入ろう」などと決断してもらう)」。相手が、この4つの「感情」をたどることをイメージしながら、必要な要素を順番に並べていけばいいのです。それだけで、必ず、相手の心に響くプレゼンになります。

孫正義氏のプレゼン資料の元担当者が断言する<br />「口下手」のほうがプレゼンの達人になれる理由!<br />

  もちろん、一枚一枚のスライドも、相手の「感情」に訴えかけるように工夫しなければなりません。これにも、「型」があります。極限まで文字量を削った力強いメッセージを大きく打ち出す。インパクトのある数字を極大フォントで表示することでキラースライドにする。あるいは、下図のように、る写真などのビジュアルを小さく使うのではなく全画面表示にする……。こうした「型」を身につければ、プレゼン終了後も脳裏に残像が残るような、インパクトのあるスライドをつくることができます。

孫正義氏のプレゼン資料の元担当者が断言する<br />「口下手」のほうがプレゼンの達人になれる理由!<br />