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 中国勢のハイセンスや米ビジオのテレビを「安物」と言ってはばからないハリウッドのフィルム・エディターのビル・ホーガン氏は、ソニーとパナソニックの品質をベストと認めつつも、4K映像コンテンツの少なさから、4K映像と4K用のハードウェアはまだ一般的ではないと主張する。

「昨年公開された映画のうち、4Kコンテンツは1%以下なんだ。最新作のスター・ウオーズだって2Kなんだからね。4Kって騒いでるのはまだ一部だけなんだよ」

 これまでの議論は、消費者がテレビを所有している、という前提ありきだが、スマホ主体の若い世代のアメリカ人にとっては、部屋にテレビがないことも、有料ケーブルテレビのサービスを購入しないことも、すでに日常になりつつある。米通信大手ベライゾンのシニアバイスプレジデント、ブライアン・アングロレット氏にこの点を聞くと、彼はこう言った。

「ミレニアルズと呼ばれる若者世代の多くは、もし彼らの部屋にテレビがあったとしても、電源はほとんどオフにしていることが、我々の調査でわかった。約70%の映像コンテンツを、彼らはテレビではなくスマホ画面で見ているということもね」

米国の若者にとって
ソニーは「シニアカンパニー」

 そんなミレニアルズ世代の1人で、テキサス出身の23歳のITジャーナリスト、ジェイサー・アクリー氏に、日本の家電メーカーの印象を聞いてみた。

「ソニー? はっきり言って、僕にとってはシニア・シチズン・カンパニーかな。うちの祖父がソニー製品に入れ込んでた思い出はあるね」

 子どもの頃、プレイステーションでは相当遊んだというアクリー氏だが、テレビに関しては、質もさることながら、価格も現実的に大きな選択要因だと言う。

「昔はソニーのテレビが最高というイメージはあったけど、今のソニーのプラットフォームや哲学が自分自身にとってしっくりくるかというと、ノーだね。価格で言えば、サムスンの800ドルのテレビですら、安売りのブラックフライデー当日でも、ベストバイの店頭で300ドルまで値下げされなくなってる時代だしね。ソニーはあらゆる製品をつくってるけど、自社のエコシステムを構築できたようには見えない。僕自身のニーズや僕自身のライフスタイルにピタッとくるものを提供してくれている感じはしないな」

 アクリー氏のような若いアメリカ人消費者のニーズを知ろうと、自費でラスベガスまでの旅費を負担し、有給休暇を使ってプライベートでCESを視察に来たという、現役サムスン社員の韓国人、K氏に会った。

 K氏いわく、サムスン経営幹部の約90%は韓国人が占めており、社内のカルチャーは軍隊の構造に非常に近く、実際に同社は軍関係のアカデミーにリクルートをかけて、厳しい規律に慣れ親しんだ人材を集めているそうだ。