電話応対については、配属されてすぐの頃にはおぼつかなく、つい学生言葉になってしまうのを周囲に注意されていました。ただ、それも場数を踏むことによって、3ヵ月もするとほぼ心配することはなくなりました。それは順調な成長だと思うのですが、「電話応対ができるなんて、成長でもなんでもないです」と新人は言うのです。

 そのときの私の反省は、「成長の定義が共有できていなかった」ということと、「こちらが期待している成長レベルの設定と、一人前レベルへのロードマップが明確でなかった」ということです。

1年目で経験するべき
「仕事のスタンダード」を明確にする

「人は3ヵ月では育たない」と冒頭に書きましたが、実は3ヵ月なりの成長はありえます。だから、1年後の成長レベルを設定して、それを3ヵ月(でなくてもかまいませんが)単位でブレークダウンした目標を若手と共有すれば、すれ違いはかなり解消されるのではないでしょうか。

 少なくとも1年かかること、3年かかることを、3ヵ月で達成できないから「育たない」→「いまどきの若手はデキが悪い」と判断してしまうとすれば、「それはあんまりだなあ」と思います。成長のために設定するべき経験も、スケジューリングし、「仕分け」する必要があります。

 意識の高い若手ほど、「成長志向」であることは明らかです。意欲は尊重するべきですが、そうは言っても「成長のために、踏むべきステップ」はあり、それは会社によって、あるいは職種や職場によって違いがあります。

 まずはステップを定義し、若手とのあいだで共有することが大前提ではないでしょうか。

 前に述べた私の経験で言うと、その新入社員は確かに成長を急いでいました。具体的に言うと、「私も早く間杉さんのように仕事ができるようになりたいんです」と言っていました。私のように、というのは、一人で編集実務をおこなったり、営業に行ってクロージングまでを取り仕切る、ということだったでしょう。

 しかしながら、そこには大きな無理があります。私は経験20年以上。それと同じレベルの業務を、入社したその年にこなせるはずがありません。そこで、入社から3年目までに、どのような経験をするべきか、私は話し合いました。話してみると、大きなギャップがあったわけです。

 意欲が高く、またポテンシャルもありそうな新入社員に、いきなり2年目、3年目に経験すべきタスクを与えるようなことも、あっていいと思います。ハードルの高さを実感することも大事ですし、がむしゃらにやることでハードルを越えてしまうことも、ないとは言えません。

 いずれにしても、1年目で経験するべき仕事のスタンダードが明確であり、しかも、それを若手と共有することが前提で、それを踏まえて強弱をつける、ときに難易度の高い仕事を与えるというようなメリハリが可能になるのだと思います。