カナダG20で先進国は大筋において財政赤字削減方針を示した。しかし、財政健全化の積極性に関しては、欧州と米日とで温度差が見られた。

 これを「成長か? 財政再建か?」という二項対立としてとらえる見方が日本では多い。

 しかし、欧州で感じられるニュアンスは異なっている。一般の有権者のあいだにリカーディアン的な「中立命題」(財政赤字は将来の増税を招くため、政府債務拡大による景気刺激策は効果がないという考え)を信じる人が多いのだ。

 6月22日に英政府は付加価値税引き上げ(20%へ)や大胆な財政支出削減案を発表した。米経済学者のスティグリッツは、オズボーン英財務大臣はイデオロギーで予算を決めており、英経済を悪化させると激しく批判している。

 だが、英「テレグラフ」紙(6月27日付)の世論調査では、「緊縮予算で今後数年の景気はどうなるか」という問いに「悪くなる」と答えた英国民は28%にとどまった。

「変わらない」は19%、「よくなる」はなんと47%もいた。厳しい緊縮予算下でも景気は悪化しないと見る人が計66%もいるのだ。

 ケインズが生まれた国なのに、意外にケインジアンが少ないのが今の英国である。ロンドンのタクシー運転手に増税や補助金のカットについて聞いてみると、「いやだけどほかに道はない。これ以上財政赤字がふくらんだら大変だ。政府は借金をもう増やせないんだろう?」という答えが返ってくる。