橘玲の世界投資見聞録 2016年2月18日

経済成長が進むインドで
今も変わらない身分差別(カースト)の弊害
[橘玲の世界投資見聞録]

 前回はインドのパスポートと交通事情について書いたが、今回はそれ以外の感想を綴ってみたい。

[参考記事]
●とにかく無駄が多いインドのパスポートと交通事情について
 

40~50年前の白人バックパッカーが集うビーチ

 下の写真は有名なゴアのビーチ。ゴアはインドにおけるポルトガルの貿易拠点で、16~17世紀の人口はリスボンを上回る20万人に達し、「東洋のローマ」と呼ばるほどの繁栄を謳歌した。1947年のインド独立後もポルトガルはゴア州の返還に応じず、61年に武力によってインドに併合されるまで植民地支配がつづいた。

 こうした経緯からゴア州はインドのなかでも外国人に開放的で、美しいビーチとエキゾチックなインド文化を楽しめることから欧米のヒッピーたちの聖地になり、満月の夜にはあちこちでレイヴパーティが開かれた。

 私がゴアを訪れたのは昨年のクリスマスの時期だが、ご覧のようにビーチを歩いているのは40~50年前にバックパッカーとしてこの地を訪れたらしき白人の中高年のカップルと、インドの家族連ればかりだ。かつてはドラッグをきめたヒッピーたちがたむろしていただろう安宿に泊まっているのも、いまは健全なインド人のファミリーか若者たちだ。

 インドには飲酒を好まないひとが多いので、ビーチサイドのクラブやバーにいるのはほとんどが白人だが、こちらもかなり年齢が上がっている。ダンスミュージックに合わせて踊っている派手なドレスの白人女性がいたが、近づいてみると銀髪に染めていると思ったのは白髪で、70歳ちかい老人だった、ということもあった。

ゴアのアンジュナビーチ              (Photo:©Alt Invest Com)

 

 世界遺産に登録されたオールドゴアにはフランシスコ・ザビエルの遺骸を納めたボン・ジェズ教会など著名な教会や修道院があるが、この観光地を訪れるのもいまではほとんどがインド人の旅行者で白人やアジア系の外国人はわずかしかいない。下の写真を見ても、インドで国内旅行者が激増していることがわかるだろう。

フランシスコ・ザビエルの遺骸を納めたボン・ジェズ教会の前で記念写真を撮るひとたち                          (Photo:©Alt Invest Com)

 

 次はチェンナイ(旧マドラス)からバスで3時間ほどのところにある世界遺産の街マハーバリープラム。ここの海岸はお揃いの赤いサリーを着た団体旅行者でいっぱいだ。彼らは大型観光バスでやってきて、ヒンドゥー寺院や土産物店などには目もくれず海に直行し、サリーのまま海水浴を楽しんでいる。個人旅行でゴアにやってくるインド人よりも所得は低いだろうが、観光への意欲が高いのは同じだ。インド大陸の内陸部にはいちども海を見たことのない膨大な数のひとたちがいるのだ。

マハーバリープラムの海岸で楽しむ団体旅行者      (Photo:©Alt Invest Com)

 

 このマハーバリープラムも、かつては欧米のヒッピーたちが集まる街として知られていた。しかしいまでは安宿の多くがシャッターを下ろし、土産物屋も閑古鳥が鳴いている。

 中国でも、国内旅行ができる中間層が増え、観光地に団体客が押し寄せてくると、かつてはバックパッカー旅行の定番だった雲南省の麗江や大理から外国人が潮を引くように消えていった。それと同じことがいまインドでも起きている。かつての賑わいを知るひとは残念かもしれないが、これも経済成長にともなう必然で、これまで観光地を外国人が独占していたことがおかしかったのだ。

マハーバリープラムのバックパッカー街は閑散としていた (Photo:©Alt Invest Com)


 


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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