百貨店にようやく復調の兆しが出てきた。

 高島屋の2011年2月期第1四半期(3~5月)の営業利益は、前年同期比87.6%増の39億8300万円と大幅増益。同じく、大丸松坂屋を傘下に持つJ.フロント リテイリングは、7.6%増の30億7400万円と営業増益を確保した。

 加えて、高島屋はニューヨークの店舗売却で、売却益が110億円出るため、第2四半期(3~8月)の当期利益は約2倍の63億円を見込む。「もはや、日本人観光客の土産需要も見込めない。昔のような役割で、店舗運営を続けるのは限界がある」(高島屋幹部)と閉鎖に至ったが、そのぶん、上海などアジアへ投資を振り向ける戦略を打ち出している。

 営業増益の要因は、グラフにあるように、リーマンショック後どん底だった国内百貨店の売上高が、底打ちしてきたためだ。高島屋は、昨年3~5月は12~13%減だったが、今年3~5月は1.5%減にまで回復した。

 そして、それ以上に利益を押し上げたのは、経費削減による効果である。

 10年2月期は年間で人件費や広告宣伝費などで181億円もの販売管理費削減に取り組んでおり、今期も120億円の削減に取り組む予定だ。たとえば、新宿店だけで32億円のコストカットになるが、そのうち人件費が21億円を占め正社員の数が半分以上減るといった大胆な配置転換を行う。J.フロントは、10年2月期に195億円を削った。

 このため、すでに増益の兆候は出ていた。

「コストを削っているぶん、売上高が下げ止まると大幅に増益になる」(奥田務・J.フロント会長)。J.フロントでは、昨年12月~今年2月は、売上高が0.9%減にもかかわらず、営業利益は28.9%増だった。今年度の第1四半期の営業利益が微増にとどまったのは、「大丸心斎橋店や大丸京都店の改装でコストが増えたため」(J.フロント)だ。

 こうした第1四半期の結果にもかかわらず、今後の業績については保守的である。

 高島屋は11年2月期の営業利益は前年同期比11.7%増の150億円、J.フロントは2.2%増の190億円の予想だ。本格回復に、まだ確信を持てないためだ。

 5月こそ高島屋は26ヵ月ぶりに百貨店売上高が前年同月を上回ったが、6月は中元商戦にもかかわらず3%台後半のマイナス。宝飾品は好調というが、主力の婦人服や、ラグジュアリー雑貨は回復が鈍い。このため、「3~5月の数字を基に今後の予想を立てるのは、リスクが大きい。下期の売上高も見通しが読めない」(久末裕史・高島屋常務)という。

 久しぶりの増益だが、まだまだ手放しで喜べるといった状態ではなさそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

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