そのとき、
吉田元総理が発した言葉とは?

すると、吉田総理がこんなふうに仰ったといいます。

「洗面台の水はねを拭くために、いちいち担当者を呼んでいては仕事にならないでしょう。

一流ホテルが一流である証は、従業員の手によって、トイレがいつもきれいであることではありませんよ。

手を洗ったあとに、洗面台を自分で拭くのが当たり前だと思うお客様が常連であることが、本当の一流ホテルの証なのではないでしょうか

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このとき、吉田総理というリーダーの考え方に触れたホテル従業員は、まさに目からウロコの思いだったのではないでしょうか。

ほかにもいろいろと、このホテルのエピソードを聞きましたが、お客様とホテルとのあいだに静かに流れる緊張感を感じるお話ばかりでした。

ここにあるのは、「お金を払っているから」と言って権利を主張するお客様と、「お金をいただいているから」と考えてとにかくお客様の言いなりになるホテル従業員という構図ではありません。

お客様もホテルで働く人たちも、互いにプライドを持ち、互いに高め合える両者の関係こそが、一流を一流たらしめる秘密なのかもしれないと思った次第です。

(第15回へつづく・2月29日公開予定)