「Mission completed (任務完了)」。

 ティッカーシンボル(銘柄コード)は、TSLA。

 電気自動車メーカー、テスラモーターズ(米カリフォルニア州パロアルト市)は6月29日、米ナスダック市場に上場した。ウォールストリート・ジャーナル他での米報道によると、売り出し時の株価は17ドル、発行株数1330万株で総額226ミリオンドル(1ドル89円換算で、201億1400万円)となった。

次世代自動車というネタを
最大限活用した商品企画ビジネス

 同社の商法については、本連載でたびたび紹介してきた。

 そのなかでも、「世界の自動車関係者もびっくり仰天! トヨタと米電気自動車ベンチャー・テスラ提携の真実」(2010年5月26日掲載)では、同社の生い立ちに触れ、「テスラは、グーグル、ヤフーなど時代を大きく変えてしまうような革新的技術を伴うベンチャーとは違う」と書いた。よって、トヨタ自動車の豊田章男社長が、テスラとの提携発表会見の場や、それ以降に各メディアで語っている「テスラに、トヨタが失いかけている(自動車メーカーの)ベンチャーとしての活力を感じる」といった類の発言に、筆者は同意出来ない。

 テスラは、「次世代自動車というネタ」を最大限度活用した「商品企画ビジネス」である。2003年設立当初の「夢の自動車を製造するメーカーになる」という同社創業陣の思いは、過去の遺物だ。同社の現行経営陣の目的は、どう見ても、IPO(イニシャル・パブリック・オッファーリング/新規株式公開)であった。

 2008年末には、「事実上の倒産説」が全米で流れるほど経営が圧迫されていた。その後、ダイムラーからの資本参加、テスラ完全オリジナルの電気自動車5ドアハッチバック「モデルS」のコンセプトモデル公開、同車の製造に対する米DOE(エネルギー省)から低利子融資獲得、そしてトヨタとの技術・資本提携。同社はIPOに向けたロードマップを猛スピードで駆け上がってきた。そのミッションが、先日完了したのだ。