ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
課長は労働法をこう使え!
【第7回】 2016年2月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
神内伸浩 [弁護士]

「不良従業員」が法律に詳しい理由
~課長を疲弊させる部下の特徴~

1
nextpage

最近の労働環境は「ハラスメントブーム」状態。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代が訪れています。新刊『課長は労働法をこう使え!』の中から、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えする連載第7弾。

「ブラック企業」が注目されると
課長が困り果てる理由

最近、大学のキャリアセンターやキャリアサポート室には、労働法関連のリーフレットや資料がたくさん置いてあります。いわゆるブラック企業やブラックバイトのニュースがメディアで頻繁に報じられ、実際に被害に遭う学生もいる中で、自分の身を守ろうと労働法を勉強する学生が急増しています。

結果として、新入社員は労働法を知っているのに、課長は知らないというケースが起こり得ます。

私は、さまざまな会社から労働問題について法律相談を受ける機会があります。すると実際に、社長や幹部よりも、従業員、それもいわゆる「不良従業員」と言われる人のほうが法律に詳しいというケースも少なくないのです。

----------

とある運送業を営む会社での出来事です。
この会社には、日頃から勤務態度や素行が悪い社員がいました。
遅刻や無断欠勤を繰り返す。
動画投稿サイトに会社を批判する動画を配信する。
社有車を休日に無断使用して遠出し、ガソリンを使い果たして補充もしない。
直属の上司の課長が退職勧奨と説得を根気よく続けて、
円満退社が決まりました。
元社員は社宅に入っていたため、
課長は「荷物をまとめる2週間は待とう」と告げます。
半分情けをかけたつもりで言ったのです。
すると、元社員は不敵に笑ってこう言いました。
「課長、何言ってるんですか。私は会社を辞めても社宅は出ていきませんよ」
「6ヵ月間は社宅に住む権利がありますからね」

-----------

社宅は会社を退職し、従業員身分を失っても、すぐ出ていかなくてはならないわけではありません。社宅使用料が近隣の家賃相場とあまり変わらないなど一定の場合には、借地借家法という法律が適用される可能性があり、正当事由と6ヵ月前の解約告知が必要になるからです。要するに、6ヵ月間は住み続ける権利があると言うわけです。

別の案件では、大学院卒の若手社員が、会社の研修施設の管理人を住み込みで1人で担当していたという事案がありました。

朝一番に施設のエントランスを掃除し、ゴミの分別をしたのちは、防犯カメラの監視モニターを見ているだけの仕事でした。「自分の能力がまったく発揮できない」と仕事に不満をもち、「自分は会社に飼い殺しにされた」「自分の才能をつぶされた」と会社を恨むようになりました。

この社員はたっぷりある時間をつかって労働法の勉強をし、ユニオンに入って、会社に団体交渉を申し入れるとともに残業代の支払いを請求しました。

結局、一定の残業代相当額と解決金を支払って解決しましたが、この若手社員の上司である課長も、団体交渉へ同席することとなり、膨大な時間をこの案件に費やすこととなってしまいました。

  「問題社員×法律知識」で困り果てる課長

課長は、これまでの長い現場経験を会社に買われてその職に就いたわけですから、実務能力は高い人がほとんどです。しかし法律を知っているかどうかに関して、現場の実務能力は関係ありません。いざというときに不利になるのは、当然ながら「法律を知らない人」です。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


神内伸浩 [弁護士]

(かみうち・のぶひろ)労働問題専門の弁護士(使用者側)。1994年慶応大学文学部史学科卒。コナミ株式会社およびサン・マイクロシステムズ株式会社において、いずれも人事部に在籍。社会保険労務士試験、衛生管理者試験、ビジネスキャリア制度(人事・労務)試験に相次いで一発合格。2004年司法試験合格。労働問題を得意とする高井・岡芹法律事務所で経験を積んだ後、11年に独立、14年に神内法律事務所開設。民間企業人事部で約8年間勤務という希有な経歴を活かし、法律と現場経験を熟知したアドバイスに定評がある。従業員300人超の民間企業の社内弁護士(非常勤)としての顔も持っており、現場の「課長」の実態、最新の労働問題にも詳しい。
『労政時報』や『労務事情』など人事労務の専門誌に数多くの寄稿があり、労働関係セミナーも多数手掛ける。共著に『管理職トラブル対策の実務と法 労働専門弁護士が教示する実践ノウハウ』(民事法研究会)、『65歳雇用時代の中・高年齢層処遇の実務』『新版 新・労働法実務相談(第2版)』(ともに労務行政研究所)がある。単著は本書が初となる。


課長は労働法をこう使え!

パワハラ、セクハラ、ソーハラ、マタハラ……。昨今は、これまであまり問題視されてこなかったコミュニケーションにも「ハラスメント」のレッテルが貼られるようになりました。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代だと言えるでしょう。そこで本連載では、国内企業と外資系企業の人事部でサラリーマン経験がある労働問題解決の第一人者が、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えします。

「課長は労働法をこう使え!」

⇒バックナンバー一覧