理由7.投資環境の整備が進み始めたこと

 2012年にダイヤモンド・オンラインにてミャンマーの投資環境を説明した際には、インフラ面や制度面の未成熟が最大のリスクと説明した。現状もそれは変わってはいない。
 ただ、その時から少しずつではあるが投資環境の整備は確実に進められている。特に、ティラワ経済特別区の整備が現在進みつつある中で、ようやく本格的な工場進出について、展望が開けてきた。それ以外にも、電力やネット環境、道路や鉄道等のロジスティックス、外国投資法をはじめとする法制度面、入管システムの刷新等、少しずつ変わりつつある。この変化を織り込む形で、多くの企業がミャンマーを投資対象国として真剣に検討を開始し始めているのが現状だ。

理由8.日本ならではの優位性が発揮できること

 ミャンマーの軍事政権が長年民主化運動を弾圧する中で、欧米諸国はそれに対して経済制裁を課してきた。一方で、日本はミャンマーに欧米諸国の動きとは一線を画して、独自のスタンスで対応してきた。欧米諸国が経済制裁を行っていた中でも、それに参画せず、またミャンマーでのここ数年の改革に、政府・民間を含めてのオールジャパン体制でサポートしてきた。ミャンマー側もそうした日本の長年のサポートは十分理解している。現地の成長を長期的視点で考え、法令を順守し従業員教育にも熱心な日本企業の進出に対しては、ミャンマー政府も非常に積極的だ。
 そうした動きの延長線上に、日本からの投資促進に向けての環境整備が進められてきた。その一つが、「日・ミャンマー投資協定」で、2013年12月15日に両国政府間で署名され、2014年8月7日に発効された。この協定では、投資保護や投資環境整備に関するルールを定めており、ミャンマーにおける投資環境の法的安定性が高まることにより、日本企業の投資活動の円滑化を目的としている。
 また、貿易投資促進のために、日本・ミャンマー間で、実務的な問題を個別に整理し解消していく、「日ミャンマー共同イニシアティブ」も2013年3月から始まっている。これと同様の枠組みは、ベトナムとの間でも「日越共同イニシアティブ」として2003年より行われており、ベトナムへの投資における実務上の問題の軽減に大きく寄与してきた。今回はそのミャンマー版だ。
 日本側からは、すでに1.査証手続き関係、2.輸出入政策、3.投資環境の改善、4.税金問題、5.インフラの改善、6.外国人・企業ルールの廃止、7.適正な保険制度の整備・改善・外資開放、8.適正な労働争議解決手段の確保、9.その他行政手続きの改善といった内容が織り込まれている。
 これらの動きのポイントは、他国に先駆けて、日本がイニシアティブをとってミャンマーに対して日本企業が進出しやすくするための基盤づくりを働きかけている点だ。その結果、他の外国企業と比較して、日本企業ならではの先行優位性が発揮しやすくなっている。