そろそろ夏期休暇の予定に向けて、最終調整をしている人も多いのではないだろうか。日本政府観光局(JNTO)の調査によると、5月の訪日外客数と出国日本人数は、どちらも前年を大きく上回る結果となった。景気の動向はもちろん、社会情勢とも深く関わってくる海外旅行事情。背景にはどんな事情があるのだろうか。

過去最高の訪日数になった国も!
各国での広告宣伝の成果か

 5月の訪日外客数は72万2000人。これは前年に比べ48.6%増。1月~5月のトータルで見ても前年を32%上回っている。5月の訪日外客数を国別に見ると韓国が20万1600人(前年比71%増)、台湾11万4200人(同62.5%増)、中国11万2800人(同86.4%増)。シンガポール(1万5100人・同61.7%増)、マレーシア(1万300人・同85.2%増)も伸び率が高かったほか、訪日外客数の多い15ヵ国はすべて前年を上回る数となった。

 中国・香港(4万900人)・カナダ(1万4400人)・フランス(1万3700人)・ドイツ(1万1000人)・インド(7900人)は、5月としては過去最高の訪日数になった。

景気回復の兆しが見えた?<br />訪日外客数が前年比48.6%も増えた本当の理由出典:日本政府観光局(JNTO)

 日本政府観光局は前年を上回った理由を、円高や景気低迷、新型インフルエンザ感染拡大などの影響で落ち込みが著しかった(34%減)昨年5月に比べて「反動が生じ、増加幅が拡大した」と分析。

 また、プラス要因として「3月28日の成田空港発着枠拡大」や「好景気・経済状況の好転」のほか、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)などの「広告宣伝の効果」、シンガポールでの「旅行会社の広告掲載料増加に伴う訪日旅行の需要喚起」、タイでの「民間企業による訪日懸賞旅行の実施」、韓国・台湾・香港・豪州・カナダでの「航空便・空港座席数の増加・回復」などを挙げている。

 急激な円高(英国・フランス・ドイツ)や、航空便・航空座席数の減少・不足(シンガポール・米国・英国・フランス・ドイツなど)などマイナス要因もあったものの、全体としての落ち込みにはつながらなかった。

 国内にいると気になることの少ないVJC。「桜をテーマにした広告・宣伝を展開」(中国)、「特設サイトで訪日旅行商品などが当たる懸賞を実施」(英国)、「フランス語版ウェブサイトのグルメ欄を通じて訪日旅行の懸賞付きアンケート・キャンペーンを実施」(フランス)など、国ごとのキャンペーンを行い、少しずつ成果を挙げているようだ。

爆弾テロや政情不安もあったが
GWの配列の良さが後押し

 出国日本人数は128万5000人で前年比24%増。過去最高を記録した2006年5月(138万5268人)には及ばないまでも、今年3月以降、3ヵ月連続で前年を上回っている。

 プラス要因として考えられるのは「ゴールデンウィークの曜日配列の良さ」「成田空港発着枠の拡大(3月28日)」「上海万博の開催(5月1日~)」など。

 パキスタン各地での爆弾テロ、イエメンでの治安悪化、ハイチやチリでの大地震(1月、2月)、タイの政情不安(3月中旬~)、モスクワ地下鉄爆弾テロ事件(3月29日)など局地的な阻害要因は多かったものの、全体として上向く結果となった。

 ちなみに、現在までに集計が出ている今年1~3月までの集計では、出国率の伸び率が一番高いのは70代(男性19.2%、女性18.4%)。第2のピークとなる8月9月の出国者数が気になるところだ。

(プレスラボ 小川たまか)