震災で津波の被害に遭った
海底を復活させる

──震災復興のために、生コンや魚礁用の砂を供給しています。これは事業の大きな転機になりましたか?

原田 そうですね。それまで競馬場やゴルフ場への実績はあったのですが、ルナサンドに生コン用の大量の砂が供給できるのか?という声もありました。私自身が岩手県一関市出身で、東北の震災復興には強い思い入れがあって、必死に取り組みました。石巻地区にストックヤードを確保し、価格を均一にした青森砂を供給。復興のためということで、地元企業や漁港関係者の皆さまに協力していただけたのが大きいですね。

 石巻地区では今、生コン用の砂だけでなく、アサリの養殖に使われる魚礁用の砂も扱っています。東松島の海岸線など、津波で持っていかれた海底の砂の再構築のためです。魚礁用に使われる砂は、食品に関わる砂なので、20項目を超す厳しい検査基準があります。それをクリアした高品質の砂を供給し、おかげさまで生産者の方からは「3年かけて育つアサリが1年で育った」など、うれしい報告も頂いています。津波の被害に遭わなくても、海底の砂は自然に浸食されて痩せてきます。国内の海岸線が抱えるそうした課題を、同じ手法で解決できないか?と考えています。

──東京オリンピックに向けて、砂の需要は多くなりますか?

原田 来年以降の砂不足を危惧する声もあります。国内では自然保護の観点から、また住宅地の近接などの立地条件から、砂の採掘場が減少しています。一方でリニアモーターカーや東京オリンピック関連で、需要拡大が見込まれています。私たちの販路も広がり、すでに外環道のトンネル工事などに使われています。

 また海外からの高品質の砂の価格が上昇したために、多様な用途でハイスペックな砂の需要が高くなり、この分野でも私たちの砂の供給が始まっています。今年1月には 船橋港の近くに新工場が完成、不純物を取り除く「焼き砂」設備を完備し、一般のお客さま向けの製品も製造できるようになりました。

 世の中の砂事情は変化しつつあり、今後は私たちが持たない技術や特徴を持つ他社とのアライアンスを強化しながら、お客さまのニーズに対応していきたいと考えています。

──創業15周年を迎えて、あらためて成長の秘訣はどこにあったと考えますか?

原田 ルナサンドが業界で認知されてきたとしたら、それは関係者の皆さまに支えていただいたからの一言に尽きます。また私たちがやりたいことを、伝え続けることで、状況が少しずつ変わっていった。常に今を超える意識を持って、お客さまや関係各所のご教示を頂き、変化することを恐れず、挑戦し続けたいと思っています。