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平井 陽一朗の人材「共育」日誌

BCGで新人コンサルタントを鍛える場を始めた意味

平井陽一朗 [ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター]
【最終回】 2016年3月16日
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 これまで約1年間、私自身のこれまでを振り返ったり、友人たちの軌跡をたどったり、大先輩の内田和成さんにお話を伺ったりしながら、育つ、育てるとはどういうことか、考えてきました。成長には王道はなく、道すじは人それぞれなので、あえて類型化したり構造化したりせず、自分の体験から思うところをつづってきましたが、一つだけ、私が強く信じ、周りの若手たちにも実行してほしいと思っていることがあります。

 それは、人から聞いただけの知識は本当には自分の糧にならない、人は自分が身をもって体験したことからしか本質的には学べないということ。成長につながる学びを得るためには、時間がないとか疲れているとかそんな言い訳なしに、自分で新しいことを考え、自分から挑戦し続ける、つまり「自立」「自走」できる能動性をもった人間になるしかないということです。

 今の時代は自己啓発本やセミナーなどでいくらでも情報が収集できますが、私は今までそういった類の本を読んだことも、セミナーに行ったことも(恥ずかしながらほとんど)ありません。本を読んだり、成功したとされるひとたちのハナシを聞いたりしても、それは数式を暗記しているようなもので、それだけでは本当の成長にはつながらないと思うからです。

 戦略コンセプトや分析の型なども同じです。どんなに多くのパターンを覚えても、本質を理解していなければ、次にそのパターンを応用できる局面にきても応用できないでしょう。知識を生きた知恵にするには、いろいろな場面に自分を置いてみるしかありません。

 脳味噌から汗をかくほど考えて、あれとこれがこうつながるのか!あれはこういうことだったのか!と気付いた瞬間のゾクゾクするような快感。それを数多く味わうことが、自分を突き動かし、成長させる。努力と経験を重ねてヒットが打てる感覚を得た野球選手、エウレカ!と叫んで風呂から飛び出したというアルキメデス、あるいはBCGの創設者、ブルース・ヘンダーソンが同僚たちとの議論の中でPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス)のコンセプトにたどりついたときもそのような感覚だったかも知れません。子どもの頃親に言われていたのと同じことを自分の子どもに言っているときに感じるのも似た感覚でしょうか。

 でも、どうすればこれを若手に身をもってわかってもらえるのか。今、私が立ち上げ、統括しているBCGの新人育成の場「HATCH」(卵が孵る、という意味です) は社会人、もしくはコンサルタントとしての重要な原体験の場として、いろいろな生の体験から、また自分で動くことで何かが変わるという気づきにつながる工夫をしています。

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平井陽一朗[ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター]

ひらい・よういちろう/ボストン コンサルティング グループ(BCG) パートナー&マネージング・ディレクター。1974年、東京都生まれ。米国の公立高校を卒業後、東京大学経済学部卒業。三菱商事を経て、BCGへ入社。その後、ウォルト・ディズニー・ジャパン、オリコン取締役副社長兼COO、ザッパラス代表取締役社長兼CEOを経て、再びBCGに入社、現在に至る。ネットサービス系企業における経営経験などを活かし、デジタルコンテンツやEコマース領域などを中心に、企業戦略や事業開発、グローバル戦略等、数多くのプロジェクトを手掛ける。


平井 陽一朗の人材「共育」日誌

「育成」は本当に難しい。例え育成の仕組みが充実していても、育てられる側に成長への意欲がなければ成立し得ません。かといって「成長なんて自己責任」で片づけてしまえば、永遠に「育成」というものに対する解を得られません。それでは、育成がうまくいっているように見える会社とそうでない会社とでは何が違うのでしょう。そうした悩みの中で、私平井陽一朗が所属していた三菱商事、ボストン コンサルティング グループ、ディズニーなどの企業で得た経験を振り返り、「育つ」「育てる」という難しいテーマを考える端緒にしたいと思います。人材育成で悩んでいる方や、社会人として成長していく過程にある方にとっても、何かしらのヒントがあるはずです。

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