アラブ 2016年3月11日

教えて! 尚子先生
「イスラム教は資本主義や自由経済を否定しているから経済発展できない」というのは本当ですか?<後編>【中東・イスラム初級講座・第31回】

マレーシアやトルコなどが見事な経済発展をとげているにもかかわらず、いまだ、イスラム社会は経済発展できないという通説がまかり通っているのはなぜなのでしょうか。イスラム経済についての後編。中東研究家の尚子先生がわかりやすく解説します。

 イスラム教と経済発展についての考え方については<前編>で説明したので、今回は具体的な事例としてイスラム金融について触れながら、イスラムと経済発展について考えてみたいと思います。

●関連記事 「イスラム教は資本主義や自由経済を否定しているから経済発展できない」というのは本当ですか?<前編>

イスラム諸国の紙幣【撮影/安田匡範】

コーランでは「神は利子を許さない」

 「イスラム教は資本主義や自由経済を否定しているから経済発展できない」という通説が根強く存在していたことは前編で説明しました。けれども、この説を理論的に裏づけすることはできませんでした。

 イスラム教はむしろ、経済活動に関して、他の宗教よりも多くのことに言及しています。

 イスラム教は、ユダヤ教、キリスト教と比べると最後に生まれた宗教です。イスラム教が生まれた7世紀のアラビア半島では、すでに活発な商業活動が行なわれ、好景気であったといわれています。しかも、創始者であるムハンマドが商人であったことから、他の宗教と比べて、イスラム教では経済活動というものの位置づけがよりはっきりしています。

 ところが、コーランの中で「神は商売を許すが、利子(リバー:riba)は許さない」と明言されていることから、イスラム教は「資本主義的ではない」とみなされてきたのです。

 実際には利子を禁じたのはイスラム教だけでなく、ユダヤ教、キリスト教にもみられる現象です。ですから中世のキリスト教世界では、ユダヤ人にその役割を担わせていたのです(詳しくは「第二次世界大戦後、なぜイスラエルが建国されたのですか?<前編>」を参照のこと)。

 コーランで利子について禁止されているものの、実は、利子の定義については、イスラム法学者の中でも解釈が様々あり、統一した見解はありません。そのため、リバーは「高利貸し」を意味しており、通常の商取引での利子はリバーに該当しないという見解もイスラム初期の段階からあったといわれています。

 近代以降、この利子禁止の原則を守ろうとする動きが出てきたのは、1950年代(パキスタン)から1960年代(マレーシア、エジプト)でした。こうした動きは1970年代になってから、湾岸地域にも急速に広がりました。

 これは石油の富の蓄積がある程度なされ、西洋的な近代化が浸透したのちの、イスラム復興運動のひとつとして考えられています。つまり、急速に各地でイスラム銀行が受け入れられた理由として、預金者がやはり利子の禁止というコーランの原則を気にしていたためだと考えられるのです。

夕暮れのモスク=アンマン, ヨルダン【撮影/安田匡範】

橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
「世の中の仕組みと人生のデザイン」 詳しくは
こちら!
橘 玲の『世の中の仕組みと人生のデザイン』 『橘玲の中国私論』好評発売中!

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。