接客人数や顧客の年代・性別などの可視化にPepperを活用している企業の一つに、富山県で飲食店などを展開する「はなと」がある。同社は喫茶レストラン「珈琲哲学」の2店舗にPepperを設置。導入前の2014年12月と比較すると、導入後の15年12月の来店客数は17%増、売上は22%増にまで達したという。

 Pepperにより、店舗ごとの顧客属性の違いも可視化された。従来は感覚的に「この時間帯は女性客が多い」といった認識しか持てなかったが、データを基に客観的な数値として顧客の動向を把握できるようになった。今後は、顧客の年齢層などに応じたメニュー開発なども検討しているそうだ。

「Pepper for Biz」向けの
アプリストアも開設

 Pepperのビジネス活用のカギを握るアプリケーションについては、法人ユースに対応するものが次々に登場している。Pepper向けのアプリは多様だ。小売や医療/介護、オフィスの受付、教育などの分野で多くのアプリがリリースされており、その数はいまも増え続けている。

 今年2月22日には、ソフトバンクロボティクスが「Pepper for Biz」向けのロボアプリストア「ロボアプリマーケット for Biz」というWebサイトを開設。これにより、容易かつ安価にビジネスアプリを利用できる環境が整った。そこには、サードパーティーが開発したアプリを含め、多様なアプリのメニューが揃っている。

 例えば、リクルートライフスタイルは同社が運営する受付管理アプリ「Airウェイト」をPepperと連携させた受付機能を提供している。Airウェイトにより、店頭での来店受付や入店の案内などをスムーズに行うことができる。

 仙台放送は老人介護施設などを対象に、脳を活性化させるロボットアプリ「いきいき脳体操」を開発した。タッチパネル方式で簡単に楽しめるゲームアプリで、利用者同士のコミュニケーションを促進するとともに脳を鍛える効果もあるという。

 エビリーが開発したのは、店頭向けデジタルサイネージアプリ「Vipper」だ。Pepperが対面する顧客の年代や性別、感情を読みとり、パーソナライズされた映像やお勧め商品などを表示する。

 ユーザー企業はロボアプリマーケット for Bizでビジネスに適したアプリを選べるほか、自社でアプリを開発することもできる。先に紹介した事例の中にも、ネスレ日本やみずほ銀行など独自開発アプリを用いているケースは少なくない。企業によって、Pepperを有効活用する場面や目的は異なる。多様な用途に対応できる柔軟性もまた、Pepperの特長の一つといえるだろう。