地方創生を成功させる
人的資源も地域にある

 では具体的に何をすればよいのか? その第一歩は自らの地域のことを徹底的に知ることだという。地域が持っている歴史、文化、伝統、自然、資源、人などを調べ上げ、地域の強みや弱みを客観的に分析する。過大評価や過小評価に陥らないように注意し、多様な人々の意見を聞きながら、議論を重ねて、戦略を練り上げてゆく。

「地域活性化に特効薬は存在しませんが、活性化のヒントはどの地域にも必ずあると考えています。ただ地域内に隠れていたり、見捨てられたりして、活用されずにいるだけなのです。こうした調査を自分たちで行い、知恵を出し合うだけで、地域は活性化していきます」

 大切なのは、地域のオリジナルの策を組み立てること。どの地域にも当てはまる万能な活性化策はなく、他地域の成功例をまねてもうまくいかない。独自策を編み出すには、前述の“知恵者”の他、地域の利害を調整する“世話役”や、課題を解決する実力を持つ“リーダー”が不可欠になる。そうした人的資源も地域に埋もれているという。

 重要なのは、他者の力をあてにするのではなく、まず自分たちが立ち上がることだという。地域に愛着を持つ住民が、主体的に動き出すことによって、はじめて地域の課題が鮮明となり、解決策も見つかる。性急に成果を求めず、へこたれずに続けることが大切だ。

 そもそも、地域活性化は古くからの課題だった。1970年代の「過疎法」や「一村一品運動」や80年代の「ふるさと創生1億円事業」や「総合保養地域整備法(リゾート法)」など、幾つもの活性化策が提唱され実施されてきた。だがいずれも一時的な盛り上がりを見せただけで終息してしまった。その要因は、国や自治体が主役になっていたからだという。

「地方創生の主役(担い手)は、国(政府)ではなく地方です。それも自治体(行政)ではなく、一人一人の住民です。国や自治体にお任せで、疲弊した地方は活性化できません。地域住民自らが主体とならなければ、国が予算をどんなにばらまいても、地方創生など不可能です。それが四半世紀にわたって地方取材を続けてきた私の結論です」