2010年3月期決算から、1億円以上の役員報酬を得ている役員の氏名・金額が公表された。ゲーム業界の話題は岩田任天堂社長と和田スク・エニHD社長の役員報酬。業界の中堅社員50人に両者の報酬の妥当性を聞いた

 金融庁は2010年3月期決算から、1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と金額を個別に開示するよう上場企業に義務付けた。その結果、ゲーム業界関連企業では任天堂、セガサミーHD、バンダイ、スクウェア・エニックスHD(スク・エニ)の計4社に該当者がいることが明らかになったが、この中でも業界内の話題を一番集めたのは、岩田聡任天堂社長と和田洋一スク・エニHD社長の報酬額だろう。

 2人は業界のリーディングカンパニーのトップで、サラリーマン社長という立場に加え、業界開発職プロパーと他業界転職組という出自の違いもあり、業界内でもよく話題になる。そこで今回は、業界の上場企業級関係者に2人の報酬額についてのヒアリングを実施した。その結果を踏まえ、ゲーム業界の報酬と働き方の関係について考えてみたい。

もらいすぎか?少なすぎか?<br />岩田任天堂社長1億8700万円、<br />和田スク・エニ社長2億400万円<br />ゲーム業界関係者50人に聞いた役員報酬の適正レベル *a 有価証券報告書記載の監査役をのぞく
*b 基本報酬に連動報酬額を加算した総額。任天堂は役員の固定報酬総額を最高5億円、連動報酬総額を最高6億円と決めており、最高総額は11億円を超えない。ちなみに、任天堂の本決算における役員連動報酬額は基本計算式を適用した場合、7億1000万円だったが、上限規定を超えるため上限の6億円となった。
(詳しくは http://www.nintendo.co.jp/ir/library/meeting/100629qa/index.html

 表1は、任天堂とスク・エニの役員報酬額と決算関連情報を示したものだが、ここで注目したいのは、役員報酬総額に占める社長報酬の割合だ。任天堂の場合は約2割なのに対し、スク・エニの場合は半分強となっている。

 この結果に、スク・エニの平均年間給与も加味して検討すると、社長報酬だけでなく、役員全体が高い傾向にあることが伺える。今回スク・エニは平均年間給与の高さでも話題になったが、今回の金額はグループ全体ではなく、あくまで持ち株会社所属17人の平均給与だ。したがって、グループ子会社のスク・エニやタイトーの従業員が必ずしも高給をもらっているわけではないことに留意したい。

 また和田社長は自ら、「ツイッター」で社長報酬額のあり方について書き込んでいる。「僕は8年間、自らの報酬を現金は押さえ、オプションで還元するよう設計してきた。が、社長はいかなるタイミングで執行してもインサイダーの疑義ありと顧問弁護士。結果、8年分のオプションは1株も行使できずゼロ。止むを得ず今年から現金報酬を世間並みに。これでいいの?」(和田洋一氏の「twitter」より)。ちなみに、当決算内における社長報酬に含まれたストックオプションの一部(第4回新株予約権3500万円分)も、会社側に無償譲渡されており、社長報酬の一部にストックオプションを含む難しさが分かる。