父親の介護疲れから不眠症になるも
医師とボランティアのお陰で立ち直った
自営業Oさん(50歳)

1人暮らしの父親から突然の電話
「あそこにはもう絶対行かない」

 賃貸物件の斡旋とマンション管理会社を経営するOさんは20代で結婚、そして離婚。それ以来独身で50歳を迎えた。掃除など家事サービス付のマンションに住んでいるので生活には不便はないが、唯一の気がかりは、実家に住む78歳の父親だけだ。

 妻に先ただれてからずっと、田舎で1人暮らしを続けていた父親だったが、昨年骨折し、入院。それをきっかけに1人で家事をするのが難しくなった。病院を退院したあとは、老人ホームのショートステイやデイサービスセンターなどを利用しながら、何とか過ごしていた。

 そうしたなか、Oさんの携帯に突然、父親から電話がかかってきた。「帰ってきてくれ。もうあそこには絶対行かない」と。

 Oさんはその電話のあと、すぐに車を出して実家をめざした。「何があったのか」と気が気ではなかった。父親は寡黙で我慢強い。母の葬儀でも涙を見せなかった。葬儀の夜、Oさんに「仕事があるのだから、早く帰りなさい」と子供の仕事を気遣うような父親だった。

 その我慢強い、普段はまったく我がままを言わない父からの電話に不吉なものを感じた。毎日迎えに来てくれるデイサービスセンターの送迎バスの運転手さんとは顔なじみだが、Oさんは実際そこに行ったことがない。自分は父親が毎日そこで何をやっているのかを全く知らないことに改めて気づいて、愕然とした。

 翌朝、父親が杖をついて起き出してきた。「いつも何をしているの?」とOさんが聞くと、Oさんの父親は話をはじめた。

「広間みたいなところでテレビをみたり、リハビリのための紙風船のバレーとか、絵手紙書いたり、歌を歌ったりするよ。あまり得意ではないけどね」

 さらにこう続けた。