メンバーがほっとしたら
それを壊すのがリーダーの仕事

【藤沢】最後にぜひ伺いたいことがあります。おっしゃるとおり、安住すると歩みは止まります。つねに危機感を持たなければならず、それは大変なことではありますが、前向きに捉えれば、つねに新しいものを追いかける喜びもありますよね。

ただ経営者がメンバーに危機感を持つように言っても難しい。どうやってメンバーに伝えていけばいいのでしょうか?

【米山】メンバーがほっとしているところをいかに壊すか。それが僕の役目だと思っていて。

【藤沢】ああ、おもしろい!

【米山】メンバーが「これでいいか」と思った瞬間に、イヤイヤイヤと。もう薄っぺらくなっているよと。商品開発、企画とかに関しては、どこでもこの程度のことはやっているよ、あの店で真似されているよ、という視点を持ち、発信しなければなりません。

今度取り組もうとしているのは、天ぷらです。居酒屋の天ぷらのレベルではなく、一つ星レストランのシェフに監修を依頼して、ちゃんとした天ぷら屋さんの揚げ方に近いものを提供してお客さんに喜んでいただこうと思っています。

つねにそう発信していくこと、現状に満足してはだめだというのが危機感であり、面白さでもある。料理人もずっと同じことをやっていると飽きてしまいますが、レベルアップをしていけば将来的にもっと幅が広がるし、次のレベルにつながっていく。まだまだ完全にできてないけど、そういった視点を持って社員に発信していくことじゃないかなと思います。

現状に満足した時点でブランドっていうのは堕ちていくし、社員のモチベーションが下がるのは、会社にとって非常に大きなリスクです。

リーダーとしての危機感、どう伝える?

【藤沢】やはり、ずっと考え続けなければならない。

【米山】そうです、きりがない。ほんとに(笑)。

【藤沢】ねえ。

【米山】このきりがない状態を楽しいと思えるか、苦しいと思うかですね。苦しいと思えば多分やめてしまう。上場したときに、いわゆる創業者利潤が入ってきましたが、1週間くらいで飽きてしまった。

ハワイに別荘買ってゴルフして悠悠自適なセミリタイア、なんて人生もありますが、何にもおもしろくないし、そういう人をみてもまったく共感できない、あんまり楽しそうにみえない(笑)。みんなでガチャガチャ新しい価値観を生んでいくほうが楽しいということを再認識しました。

株主説明会では、まあまあ辛い質問も受けますが、今にみてろって思うこと自体が心地いいし、楽しいので。

リーダーとしての危機感、どう伝える?

【藤沢】米山さんのようなリーダーのもとで働かないとだめですね。上場したら上がりだと思っている社長のところで働くのは切ないと思います。社員が可哀想です。上場で社長が燃え尽きて、跡に道が残らない。

【米山】後輩経営者たちがよく、上場しますって言いますが、なぜ?って聞くと、「創業者利潤が…」って言う者がいる。そういう後輩経営者は罵倒することにしています(笑)。

【藤沢】ありがとうございました。私が米山さんに惹かれた理由を改めて認識できました。

[対談完]