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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

犯人に告ぐ! 見えない敵との心理戦
企業広報マンが最後に決めた
愉快犯に対する伝説の緊急告知!!

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第5回】 2010年7月21日
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見えない敵 愉快犯の脅威!

 首都高の入口手前にあるスーパーで、ひと組の家族が菓子パンと飲み物を買った。高速に乗ったあと、近くのドライブインで休憩し、車内で軽食をすませるためだった。待ちきれずに子供がパンに手を伸ばしたとき、母親がパンに鈍く光るものを見つけて絶叫した。

 これから2週間に渡って毎日開始される悪意の異物混入事件の幕開けだった。異物はカッターナイフの刃、決まって販売店舗の現場でB社製造の菓子パンに、包材外部からねじ込まれていた。毎日菓子パンの種類が変わり、混入された場所も4都県、14市区にまたがっていた。当初所轄警察署は悪質な異物混入事件として、犯人逮捕を捜査刑事に厳命していたが、毎日所轄エリアを超えた場所で事件が発生し、捜査は混乱していた。

 さらに、異物が混入された販売店舗はいずれも大規模小売店舗で、顧客の出入りが激しく、監視カメラでは犯人を特定することは不可能だった。しかも犯行は夕方から夜にかけて特に込み合う時間に集中していた。犯人は予想以上に頭のいい人間だった。

 最初の混入事件発覚の際には、毎日犯行が継続されるとは、ほとんどの社員が予想していなかった。むしろ大規模小売店に恨みのある者が、たまたまB社の製品を利用したにすぎない可能性もあると考えていた。司法当局は、すぐにも犯人から何らかの要求が関係者にあるか、1~2週間以内にさらなる犯行が行われる可能性を指摘していた。

 しかし、大方の予想をあざ笑うように、犯行は毎日B社だけをターゲットとして計画的に行われた。かつて日本でこれだけ継続的に「声明または要求なしの異物混入」が行われたことはない。捜査関係者を含め、犯人の意図が読めなかった。3日目の犯行が確認されたとき、刑事の一人が「愉快犯の犯行だ!」とつぶやいた。

信用回復か、犯人逮捕か

 「このような卑劣な犯人を野放しにしてはいけない」

 司法当局の強い思いが、企業経営陣の心を揺り動かしていた。3回目の混入が確認された時点においても、マスコミは本事件に気づかず、世間にも隠されていた。大きく騒ぐことは愉快犯を鼓舞させることにほかならず、事件の長期化を予想させたからである。そのせいもあってか、経営陣はこの事件がそれほど大きな問題になる前に、司法当局によって必ずや犯人が逮捕されるものと信じて疑わなかった。

次のページ>> 地方新聞の取材が迫る
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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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