利上げペース・経済見通しは相当に慎重
ただし今後はタカ派方向へ修正の可能性が高い

FOMC“慎重過ぎる姿勢”は追加利上げへの布石3月16日のFOMC時のイエレン・FRB議長
Photo:Federalreserve

 米国の中央銀行である連邦準備制度(Fed)は、3月15・16日に今年2回目の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を開催し、金融政策の据え置きを決めた。その上で、2016年の利上げペースに関する想定を大幅に引き下げつつも、利上げプロセスを継続する方針を示した。

 FOMC参加者により示された2016年の利上げペースは、2016年に25bp刻みで2回、つまり50bpである。これは昨年12月に示された100bpの半分に過ぎない。加えて、利上げペースのみならず、経済や物価動向についても示された見通しはハト派寄りであり、大方の想定より相当に慎重なスタンスを示したと言えるだろう。故に金融政策動向を強く反映する2年国債利回りは、0.99%程度から0.86%程度へ約13bpもの急低下を示した。

 しかし、足元の雇用情勢やインフレ動向を踏まえると、現実の経済動向、特にインフレ動向が、FOMC参加者に対し今回の会合で示された以上の利上げペースを促す可能性が相当に存在するだろう。

 2月の消費者物価指数(CPI)や、そのCPIから想定される2月の個人消費支出デフレーター(PCDE)動向は、明らかにインフレリスクの存在を示している。それは、イエレン・FRB議長が記者からの質問に答えて、インフレ率のオーバーシュートを目指す可能性や、ビハインド・ザ・カーブ(インフレ率上昇や景気過熱に対し金融引き締めが後追いになること)に陥る金融政策運営の可能性を共に否定した点からも確認できる。

 つまり、今回のFOMC会合の結果は明らかにハト派寄りだが、過去1年にわたり繰り返されてきた政策運営や見通しの修正とは異なり、今後想定される金融政策運営スタンスの修正はむしろタカ派方向になる可能性が高いと筆者は判断する。

 今回のFOMC会合の結果に対する株式市場や債券市場の反応は、筆者が考える将来のタカ派方向への認識修正リスクをある程度暗示しているように思われる。

 まず株価の上昇は、市場参加者の多くが考える経済・物価情勢に照らし、今回示されたFedのスタンスが過度にハト派的であることを意味している可能性があるだろう。一方、10年国債利回りが1.99%から1.91%程度へ、8bp程度の大幅な低下を示すも、先述した2年国債利回りの低下に比べ小幅であった点は、債券市場もインフレリスクを以前に比べ認識せざるを得ない状況にあることを示唆する。

 あえて誤解を恐れずに言えば、今回のハト派的なスタンスは、2月半ばからの金融市場のリスクオンへの反転を助長し、Fed自らが成し遂げんとする利上げプロセスの地ならしを図ることを目的にしているのかもしれない。

 以下では3月のFOMC会合の分析を詳述する。