ケース・インタビューは
戦略コンサル実務のシミュレーションである

 ケース・インタビューは、志望者の中から将来の有望なコンサルタントを選別できるように作成されており、コンサルティングの現場で行われている実務をきわめて見事に反映した内容になっている。このことを頭に入れながら、以下のことをよく考えてほしい。

 第1に、もしあなたがケース・インタビューを苦手とするのであれば、コンサルティングの仕事も嫌いになるだろう。戦略コンサルタントになるということは、仕事で毎日ケース・インタビューに取り組むようなものだからだ。

 第2に、ケース・インタビューには推定問題が組み込まれていることが多いが、これは実際のクライアントが常にそのような質問をコンサルタントにしてくるからである。

 たとえば、クライアントが中古車販売事業への新規参入を考えているとしよう。このとき、クライアントからは「中古車販売の市場規模はどれくらいかわかりますか」というような質問が来るだろう。それに対してコンサルタントは、「そうですね。アメリカの人口は3億5000万人ですから……」といった具合に話を進めていくことになる。

 私は就職活動中にたくさんの推定問題を出題されたが、マッキンゼーでコンサルタントとして働き始めてからは、もっと多くの推定問題に答えなければならなくなった。

 第3に、ケース・インタビューで起きることは、すべて実際のコンサルティング現場でも起こりうるということだ。ケース・インタビューは、さながらコンサルティング実務のシミュレーションである。インタビュアーから投げかけられるさまざまな質問に対して、よい印象を与えようとする「志望者」の立場で答えてはならない。自分をクライアントに接する「コンサルタント」の立場に置き換えて考える必要がある。

 戦略コンサルティング・ファームの評判は、コンサルタント(すなわち、あなた自身)の対応いかんで決まることを理解して、どのような受け答えをすればクライアントが満足してくれるかを、自分に問いかけるのである。

有能なコンサルタントの
資質があることを示す必要がある

 戦略コンサルティング・ファームとコンサルタントは、自分たちが有能であることを早い段階でクライアントに示さなければならない。特に新規のクライアントの場合、先方の内部にはコンサルタントを起用する効果について、疑念を抱いている社員がいるものだ。彼らは、自分たちのほうが業界知識やビジネス経験が豊富なので、コンサルタントの意見などたいした価値がないと考える。

 このような状況において、戦略コンサルタント(あなた自身)はどうすれば自分が有能であることを示し、相手に真剣に取り合ってもらえるようになるだろうか。その答えは以下のようなものだ。

●クライアントがそれまで考えたこともなかったような、示唆に富んだ質問を投げかける。
●さまざまなデータを分析し、クライアントがそれまで認識していなかった新しい気づきを見つける。
●客観的なデータに支えられた結論(特に直感とは反するものが望ましい)を提示し、クライアントを新しい方向への戦略的意思決定へと導く。

 クライアントの一部の社員が、コンサルタントへの対応から解放されて早く自分たちの日常業務に戻れるように、コンサルタントの面目をつぶす機会をうかがっていることはよくある。彼らは半ば敵がい心を持ち、コンサルタントがどこかで失敗しないかと目を光らせている。

 コンサルタントが犯してしまう、最もありがちな2つの失敗は以下のようなものだ。

●無礼、傲慢、あるいは見下したような態度で、クライアントを怒らせてしまう。
●客観的なデータの根拠がないまま、結論を提示する。

 戦略コンサルタントは頭脳的な面のみならず、対人関係の面でもスマートでなければならない。このため、戦略コンサルティング・ファームの多くは、優れた対人関係スキルを持った志望者を選別することを主目的とした採用プロセスを取り入れている。

 コンサルタントが何かしらの提案を行うときに、緊張していたり、自信がなさそうに見えたりすると、クライアントは説得力がないと感じる。同様に、ケース・インタビューで志望者の答えが完璧だったとしても、答え方に極度な緊張感や不安がにじみ出ていれば、不合格となる。

「従業員を2500名削減すべきです」と提案するコンサルタントが自信なさそうに見えれば、クライアントはその価値を疑うはずだ。たとえその提案が100パーセント正しかったとしても、内容そのものよりも、コンサルタントがどう伝えたかが強く印象づけられるので、その提案を実行することへの不安やためらいを感じてしまうのだ。

 このためインタビュアーも、志望者が問題を分析して解決に取り組む際の、自信の度合いを評価する。ケース・インタビューで合格するために、最大級の自信と洗練された振る舞いまでは必要ないが、少なくとも、言っていることが支離滅裂になるほど極度に緊張してはならない。

 前段で私が述べたとおり、戦略コンサルティング・ファームが面接プロセスで行うことにはすべて理由や目的があり、その大部分は面接をコンサルティング実務のシミュレーションと捉えていることに起因する。このことは覚えておくべききわめて重要なポイントである。