観光文化から
リゾート文化への発展

 とはいえ、まだ課題も多い。リゾートライフが根付くための要件は、可処分所得と余暇日数の増加だが、日本の有給休暇消化率は47.3%(厚生労働省「2015年就労条件総合調査」)と国際的に見ても低い。

「これを70~80%に引き上げるためには、政財界が一つになって取り組まなければなりません。現場レベルでは、経営者や上司の理解も必要です。それが実現すれば、有給休暇消化日数も現状の8.8日から15日ほどに延び、本格的なリゾートライフを楽しめるようになるでしょう」

 もちろん、新しいリゾート運営の在り方も模索されている。リゾートの語源であるフランス語の「resortir」(たびたび出掛ける)を体現する、何度も行って楽しめる場所であるための“仕掛け”の設定だ。

 1ヵ所での滞在日数を延ばすためには、周辺にどれだけの魅力的なアクティビティがあるかが重要である。欧米のリゾート地には、図書館、美術館、コンサートホールなどが必ずあるという。

「ドイツには、クラインガルテンと呼ばれる、宿泊施設付きの市民農園があります。利用者はそこに定期的に滞在し、土いじりを楽しむのです。菜園を造れば耕作放棄地の活用にもなり、現地での雇用も生まれるでしょう。ゴルフやマリンスポーツと同様に、農園や工芸品作り、そば打ちなど、その土地での産業体験をアクティビティとして取り入れる。そうした“動的”アクティビティと、コンサートなどの“静的”アクティビティの充実がこれからのリゾート運営に求められます。そうして、リゾート地を基点に地域住民との触れ合いや周辺の観光巡りができれば、地方創生・活性化にもつながるはずです」

 プロダクトアウトではなく、利用者のニーズを見据えてのマーケットイン。そして、観光文化からリゾート文化へ。それが本当の日本の豊かさにつながるはずだと、河野教授は期待を込めて語った。