こんな算数で、決められるほど……

 さて、ここからが本題です。

 筆者の預かる企業研修などで、このような方法論が話題にのぼると、必ず(口には出さなくても)こう思う方がいらっしゃいます。

「そんな算数で決められるほど、ビジネスの意思決定は単純じゃないよ」

 ……なるほど。しかし筆者は、このご意見にはまったく同意できません。
 なぜなら、この方法をネガティブに捉える人は、単に「決める勇気がない人」だからです。

 どういうことか、説明しましょう。
 先ほどのように数字で優劣をつけるということは、グレーが許されない、白黒はっきりつける行為と言い換えることができます。

 ところが白黒をつける勇気のない人は、できればグレーの状態でいたい、白黒をつけて間違うのが怖い、そう思っています。

 少し厳しい言い方かもしれませんが、本気で決めようと思っていない。だから、こんな単純明快な方法論を肯定できないのです。

 逆に、本気で決めようと思っている人は数値化する勇気がありますから、このようにすぐ白黒をはっきりつけることができます。結果、仕事を前に進めるスピードとパワーが備わっている。

 ビジネスでは複雑に考えれば考えるほど、決められなくなることがわかっているのです。