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他社の撤退店舗に居抜き出店で急成長
その名も“ロードサイドのハイエナ”
エムグラントフードサービス社長 井戸 実

週刊ダイヤモンド編集部
【第119回】 2010年7月29日
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エムグラントフードサービス社長 井戸 実(撮影:Kiyoshi Takimoto)

 「この壁はぶち抜けるか」「厨房から客席へ料理はどう流す」

 7月中旬、埼玉県鴻巣市のロードサイドにある閉店した大手居酒屋。電灯がつかない薄暗い店内を、懐中電灯を片手に、間取りや設備を調べて回るエムグラントフードサービス社長、井戸実の姿があった。

 閉店したこの店舗の家賃が高いため、次の借り手が1年近く見つからなかった。そこで、地主が家賃を半額にしたところ、井戸がすぐさま飛びついたのである。井戸は30分足らずで契約を即決した。数ヵ月後には、同社が5月に始めた新業態店「とんかつ&サラダバーよしかつ」の3号店に生まれ変わる予定だ。

 ただし、居酒屋がとんかつ店になるといっても、実際に変わるのは店名と看板くらいのもの。

 じつは、同社のビジネスモデルは閉店した店舗に居抜きで入り、内装から設備、什器までもらい受けて、出店コストを徹底的に抑えるというものだ。

 閉店する側にすれば、居抜きで渡せば、店舗の原状回復費用を節約できるし、決して安くない設備や什器の搬出・保管費用も負担せずにすむ。

 かくて、閉店ラッシュの続いたファミリーレストラン、さらには焼き肉、回転寿司など、ロードサイドでの競争に敗れた店舗が次々と“餌食”になった。

 餌食にされた企業が井戸に付けたあだ名が「ロードサイドのハイエナ」。弱ったファミレスの肉を漁り、おいしいところだけ持っていくという意味である。

“ハイエナ”商法で
会社設立から4年で売上高140億円

 ハイエナのもう一つの武器が、ローコストオペレーションだ。

わが社はこれで勝負!
税込みで1000円強のステーキやハンバーグに無料でご飯、サラダバー、カレー、スープがおかわり自由で付くという破格の安さで人気を集める。店側はセルフサービスで人件費を抑えられるので、二者両得の関係になる仕組みだ

 同社が展開する主力業態「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」のメニューは文字どおり、ステーキとハンバーグに特化している。これを注文すると、ご飯、サラダバー、カレー、スープの食べ放題が無料で付いてくる。さらに、210円でドリンクバーも用意されており、客のほとんどは格安な食べ放題、飲み放題に驚き、喜んで注文する。

 これは裏返せば、メイン料理以外はセルフサービスで、人件費を大幅に縮小できることになる。大手ファミレスが多種多様なメニューを揃え、人手をかけるのとはコスト構造が違うのだ。

 一般に大手ファミレスが店舗建設費や入居保証金などで新店1店舗当たり約1億円を投じるのに対し、同社の平均出店費用は約600万円。さらに人件費も抑えられるから、当然、損益分岐点は同業他社より低くなる。

 「大手は平均で1店舗の月商が700万円を割ると赤字になるが、うちは600万円で採算が取れる。だから、大手が撤退する立地でも十分利益が出る」(井戸)という仕組みである。

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