アンケート結果を集計した円グラフは意味がある?

川村 西内さんの本で印象的だったのは「あみだくじはどこを選んでも確率は平等だと思われているけど、実は真上が当たる確率が高い」という統計だったんですが、当たり前のことなのにほとんど誰も知らないじゃないですか。それって「必勝法なんかない」と信じ込んでいたものに「実は必勝法があった」という話だと思うんですけど、僕はそこも経験と勘で探り当てているところがあります。
西内 経験と勘は大事ですよね。僕もいろいろな会社のお手伝いをするとき「この仕事に関しては自分より相手の方が詳しい」という大前提を忘れちゃいかんと思っています。自分がやるべきことは、会社の中で一番センスがあって勘が働く人がわかっていることを、誰もが会社で使えるものとしてノウハウに落とし込むことなのかなと。

川村 経験と勘を、きちんと数値化するわけですね。
西内 ただ、経験と勘で勝てる人でも無駄なポイントがあるので、そこを見つけていきます。「いろんな角度から検証しましたけど、あなたがやっていることはあっちよりもこっちの方が大事なので、それを全社でやっていきましょう」みたいなことです。

川村 確かに会社ですごく仕事ができる人を分析して、みんなが「そいつのやってることは、つまりこういうことなんだ」というのを共有できて、周りがそれを真似できたら、最強のチームですよね。
西内 そうなんです。

川村 ちなみに、統計と聞いて僕が思い浮かべるのが、「大変よい」「よい」「普通」「悪い」「すごく悪い」というアンケートの回答が反映された円グラフなんですが、「そんなざっくりなデータを取ったところで、どう使うの?」と思うことが多々あって…。
西内 数字が出ているのに、モヤッとした感覚で比較するのはもったいなくて、例えば川村さんの映画でも「前回と今回ではなんとなく今回の方が満足度が高い」という集計で終わらないで、次のステップにつなげる統計に落とし込むことが大事です。

川村 確かに、文系人間は集計を見て、それで満足してしまう傾向がありますよね。
西内 仮に満足度が高かったとしてもそれが果たして利益になっているのか、あるいは歴史に残る評価につながっていくのか…みたいなところを見る必要があって、もっと言うと、そもそも出てきた数字を使って自分たちはどんな意思決定がしたかったのか、その土台を持っていることがポイントだと思います。