『週刊金曜日』編『安倍政治と言論統制』(金曜日)所収の池上彰と私の対論は、「佐高さんの本を読んでいると、よく私への批判が書いてありますね」という池上の発言から始まる。

 それまで面識はあったが、じっくり話したことのない私との対談を、正直言って、池上が引き受けてくれるとは思わなかった。しかし、反論したいところもあったのか、OKとなって、それはある日の午後11時から始まった。さすがに売れっ子で、予定はビッシリなのである。

「私は弱いんでしょうね」
率直さが池上人気の秘密

 たとえば私は池上を次のように批判した。

 <2013年3月21日号の『週刊文春』に掲載されたジャーナリスト・池上彰の東京電力社長・廣瀬直己に対する「誌上喚問」を読んで、池上が“マスコミの寵児”となっている理由がわかった。

 要するに、池上は徹底追及をしないのである。この寸止め感が一般の人に安心感を与えるのだろう。もちろん、東電社長も首までは取られないと思って、ここに出てきた。

「このインタビューは東電の宣伝広告にはなりませんよ(笑)」と池上は言っているが、結果的に『東電も精一杯がんばっていますよ」という“宣伝広告”になってしまった>

 以下は拙著『タレント文化人200人斬り』(河出文庫)に譲るが、前記の対論で私は池上に、東電の社長に、なぜ原発について尋ねなかったのか、と問うた。

「答えは決まっているので」と池上は答えたが、やはり聞かなければならなかったのでは、と重ねて質すと、池上は、「廣瀬社長は火中の栗を拾うような形で社長になったわけです。そんな中でインタビューするとなると、つい『大変だな、この人』なんて思っちゃうんですよ。きっと私は弱いんでしょうね」と言ったので、私は、「そうすると、何かこっちが図々しいみたいになる(笑)」と返した。

 その後も東電のお役所体質などについて触れたら、池上は、「いま、『ジャーナリストとして未熟だ』と叱られているんですね」と反省めいたことを口にしていたが、この率直さが池上人気の秘密でもあるのだろう。